
罪焔
作者:片摩 廣
登場人物
立花 蓮(たちばな れん)・・・俳優
若くして成功した天才型
久城 澪(くしろ みお)・・・女優
役に生きる女優と評されている
神崎 玲司(かんざき れいじ)・・・俳優
10代でブレイクし主演作を途切れさせていない成功者
天王 リルル(てんのう りるる)・・・ロリ系アイドル
アイドルとしてデビューして1年で、映画の配役に抜擢される
比率:【2:2】
上演時間:【60分】
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CAST
立花 蓮:
久城 澪、アナウンサー:
神崎 玲司:
天王 リルル、ファンの女性:
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(街の雑踏)
(一際目立つ、大きいビルのスクリーンから、ニュースが流れる)
アナウンサー:「当初、予定していた番組を変更して、緊急特番を放送致します。
全人類が、待望していた夢が、ついに実現しました!
若返りの技術が、完成したのです・・・」
立花:(N)「そのニュースが、街中で流れてから、世間は、若返りの話題で持ちきりになったそうだ・・・。
真っ先に、その技術に手を伸ばしたのは、金を持て余している富豪達・・・。
次第に、一般人も、若返りの虜になり始めた。
だが、若返りが浸透してから、数百年・・・。特有の問題も出て来た・・・。
若返りが当たり前となった現在は・・・、芸能界でも、大御所が引退するなどと言った、
これまでには当たり前の事が・・・、当たり前じゃ無くなったのだ・・・。
これは・・・、そんな現在に起きた、人間のエゴの物語・・・」
(タイトルコール)
久城:「罪焔」
(映画、完成記念、披露パーティー会場)
(フラッシュの光。グラスの触れ合う音)
(関係者達が、用意されたブッフェ料理を食べながら、談笑している)
立花:「ふっ・・・。
撮り終えた瞬間より、こうして名前が並んだ時のほうが、
映画が出来たって実感するな。
それにしても・・・、主演でもない関係者達が、用意された食べ物、片手に談笑とは・・・。醜い光景だ・・・。
若返りに取り憑かれた亡者どもが・・・」 (ワイン片手に、どこか値踏みするような視線)
久城:「あら? あれでこそ、人間じゃない?
死を恐れ、若返る事に固執して、業界に居座り続ける。
ほら、見て。
その亡者達に、媚びを売って、次の出演を勝ち取ろおうと新人達が必死になってる・・・。
でも、残念な生き物よね~。
主演を勝ち取るためには~、人々を魅了する力も必要だって言うのに・・・。
あれじゃ、逆効果だわ」
立花:「相変わらず、辛口だな。澪。
・・・この前、新人女優を泣かせたと聞いたが・・・?」
久城:「少し、芸能界の厳しさを教えてあげただけよ。
私・・・、涙を流せば、何でも言う通りになると思ってる女・・・、気に食わないの」
立花:「ふっ、それで、落とされる俳優や監督は、俺もゴミだと思うよ。
この手で、芸能界から排除したくなる・・・」
久城:「まぁ、怖い! ・・・うっふふふ。
でも、それが、私達、選ばれた人間には、出来ちゃうのだから・・・、力は手放せないわよね。
それにしても・・・、今回の映画・・・、此処までのパーティーを開くほどの出来かしら・・・?」
神崎:「お二人さん、相変わらずですね~」
立花:「玲司・・・、何処に行ってたんだ?」
神崎:「何処って、ファンサービスですよ~。・・・貢いでくれるファン達に、惜しみなく愛を平等に与える。
それも・・・、俺達、選ばれた人間の務めじゃないか」
久城:「そうね~。愛が欠けたら、ファンなんて、あっと言う間に、アンチに変わる・・・。
適当に足らえたのなら、どんなに楽だか・・・」
立花:「アンチに変わらすとは、まだまだだな。・・・俺を裏切る事があれば・・・、簡単だ。・・・消えて貰う・・・」
神崎:「流石、ファンを支配下に置いて、コントロールが出来てるだけあるよな。
俺も・・・、お前を見習いてーよ」
立花:「はっ! よく言う。・・・お前も、ファンを上手く、コントロールしてるじゃないか?」
神崎:「ありゃりゃ、バレてましたか~」
久城:「え? 玲司、あんたもなの?」
神崎:「ファンが、暴動起こしたら、ジエンドだからね~。
俺の場合は、カースト制度を用いて、コントロールしてるよ。
・・・ま、一応、強制はしてないけど・・・、俺を推し続けるために、若返りしてるファンも居るには居るからね~」
立花:「そこまで行くと、ある意味、病気に近いな・・・」
久城:「つまり、地位を争わす事で、コントロールしてるわけね・・・」
神崎:「その通り。いや~、俺に近付くために、皆、必死でさ~、健気なもんだよ」
立花:「どうせ、近付かせる気はないんだろう?」
神崎:「当たり前じゃん。・・・一般人なんて、利用するだけの価値の物だよ・・・」
(両手でグラスを持ち、首を傾げてリルルが近付いてくる)
天王:「えへへ・・・。皆さ~ん、こんな所に居たんですぅか~?」
久城:「あら? リルルちゃん。・・・記者会見は、終わったの?」
天王:「は~い! リルル~、お偉いさん方から、
若返りの広告宣伝の担当に任命されました~!
久城:「凄いじゃな~い! ・・・喉が渇いたでしょう? はい、ジュース」
天王:「わ~い! リルル~、ジュース、だ~い好き~!」
久城:「喜んで貰えて良かったわ~」
立花:「ふっ、微笑ましい光景だな・・・」
神崎:「ちょっと、蓮。幾ら何でも、聞こえちゃうよ」
立花:「構わない」
天王:「何か~、今~、リルルの悪口、言ってました~?」
立花:「だったら~、どうする~?」
天王:「・・・」
久城:「もう、蓮! 好い加減にして! ほら、リルルちゃん、何でもないから、気にしないでも・・・」
天王:「そんな性格だから~・・・、関係者から、使いにくいと言われるんだよ・・・」(突如、大人びた口調に変わる)
立花:「なんだと!?」
天王:「まさか~、気付いて無かったの~!?
現場の空気、ピリピリするし~。
皆~、蓮くんの顔色ばっか見てたもん!」
立花:「・・・今、なんて言った?」
天王:「え!!? だって、本当のことでしょ? (きょとんとしながら)
・・・(小さく笑う)
リルル、言われたもん。
立花さんの機嫌~、そこだけ気をつけてって~」
(グラスが、強く置かれる音)
立花:「一体、何処のどいつが、そんなこと言った・・・!?」
天王:「それは~」
神崎:「そこまで。・・・蓮、声が大きいよ。
関係者が、こっちに注目してる・・・」
立花:「うるさい。そんなの構うもんか!」
神崎:「今度の、本命の映画関係者も来てる・・・」(小声)
立花:「何だと・・・?」(小声)
神崎:「良い? 此処は、我慢して・・・」
立花:「あぁ・・・」
天王:「エヘッ! 何か、リルル~、お腹すいちゃった~! 食べ物、取ってきま~す!」
立花:「アイドル風情が・・・。舐めやがって・・・!」
神崎:「・・・」
間
久城:「リルルちゃん・・・。今回の映画に抜擢されるだけあるわね・・・。
あの子・・・、女優としての才能がある・・・」
立花:「馬鹿を言うな。・・・あんなアイドルが、そんな訳無いだろう。
どうせ、監督に色目を使って選ばれたに決まってる・・・。
俺を馬鹿にしやがって・・・。
このままでは、済まさない・・・」
神崎:「それにしても・・・、若返り、流行ってるね~。そこまでして、若返りたいものかね~」
立花:「どの口が言ってる? 知ってるんだぞ・・・」
神崎:「一体、何の話?」
立花:「あくまでも、とぼけるつもりか・・・。まぁ良い・・・」
神崎:「今日の蓮、何か怖~い」
久城:「若返りの話題になると、すぐ機嫌が悪くなるのは、蓮・・・、貴方の悪い癖よ・・・。
良いじゃない。若返る事で、メリットもあるんだから~」
立花:「その言いぐさだと、お前も、若返りに賛成なんだな・・・」
久城:「そうね~・・・。
あそこで、高いワインやシャンパンを貪る亡者達みたいには、なりたくないけど・・・、
年老いたら、出来ない作品も・・・、諦めずに出ることが出来るなら・・・、決して悪くないと思うわ」
立花:「ふん・・・。メリットしか見えてなくてお気楽だな・・・。
・・・若返りが、芸能界でも流行り出してから・・・、大御所が引退する事も無くなった・・・。
だから、新人達の活躍する場が減り・・・、あんな媚びを売る連中が増えたんだ・・・」
神崎:「蓮の言う事も一理あるね・・・。
・・・あそこに居る大御所俳優・・・、
今回の若返りで、3回目だと自慢していたよ・・・」
久城:「活躍してる大御所が、いつまでも居座るから、作品の質は落ちないけど・・・、真新しさは無いわね・・・」
立花:「誰かが、この狂った世の中を正さない限り・・・、芸能界は御終いだ・・・」
神崎:「まぁ、そうだね~・・・。おっと・・・、ごめん。・・・俺、ちょっとトイレに行ってくる」
久城:「監督のスピーチ、もうすぐ始まるわよ~」
神崎:「すぐ戻るからさ~」
間
久城:「玲司ったら・・・、本当、落ち着きがないわよね・・・」
立花:「トイレね・・・。物は言いようだな」
久城:「え? ・・・まさか、監督のスピーチをバックレる気・・・!?」
立花:「どうだろうな~・・・。
ファンサービスにかかる時間によるだろうが・・・、俺には真似できないよ・・・」
久城:「ブレイクしてから、主演作が途切れない人気俳優の裏の顔・・・。
いざ、知ってしまうと、何の感情も湧かないから不思議」
立花:「芸能界で生き残る為なら、手段は選ばない男だよ・・・、あいつは・・・」
天王:「あれ~、皆さん、まだ、此処で話してたんですか~」
立花:「悪い・・・。俺も席を外す」
久城:「行ってらっしゃい・・・」
天王:「どうやら私~、嫌われちゃったみたいですね~」
久城:「気にすることはないわよ。・・・それより、私も何かお腹に入れてこようかしら」
天王:「それなら~、向こうにあるお寿司が美味しかったですよ~」
久城:「あら、良いわね。
・・・。(電話が掛かってくる)
・・・あ、マネージャーからだ・・・。
ごめんなさい・・・。私も・・・、少し席を離れるわね・・・」
天王:「は~い!」
間
(ホテル廊下)
神崎:「いつも、応援ありがとう・・・。・・・悪い、そろそろ会場に戻らなきゃ・・・」
ファンの女性:「神崎さん・・・。・・・これ・・・、受け取ってください・・・!」
神崎:「・・・え? これもくれるの・・・。
うわ~、どうしたの? こんなに高い時計・・・。
・・・ごめんね・・・、無理させちゃって・・・。
でも・・・、君の事を思って、使わせて貰うね。・・・ありがとう! じゃあね~!」
神崎:「ははっ・・・。儲け、儲け!」
立花:「一部始終、見させてもらった・・・」
神崎:「・・・天才と世間を騒がす俳優が、まさか、覗きが趣味とはね~。
見たからって何?
俺を脅して、金でも要求する気?」
立花:「そんな下衆な真似はしない。・・・所で、その時計、どうするつもりだ?」
神崎:「う~ん、そうだな~。・・・この時計・・・、同じものと色違い合わせて、10個あるんだよね~。
流石に飽きて来たから・・・、恵まれない新人俳優くんにでも、あげようかな~。
あ~・・・、それとも・・・、欲しいならあげようか~?」
立花:「ふざけるな・・・」
神崎:「冗談だって~! そんな目付きで睨まないでよ~」
立花:「・・・」
神崎:「ねぇ、・・・さっき、リルルちゃんが言った言葉、気にしてるでしょう?」
立花:「ふざけるな! 俺は、あんな新人の言葉なんか、気にしてない!」
神崎:「大声で叫んでるのが証拠だよ・・・。
何度も言うけど・・・、本命の映画関係者も来てるんだから、もう少しお行儀よくしてよね」
立花:「チッ・・・。・・・分かったよ・・・」
神崎:「新人や若返りを繰り返す大御所達には、今を楽しませとけば良いのさ。
俺達が焦る理由は何も無いよ」
立花:「そうだな・・・。今に見てろ・・・。このままじゃ済ませない・・・」
神崎:「やっぱり良いね~。君の表情・・・。さっ、会場に戻ろう」
立花:「あぁ・・・」
間
天王:「・・・あ、神崎さん、お帰りなさ~い!」
神崎:「リルルちゃん、いつも元気一杯だね~。あれ? 澪は一緒じゃなかったの?」
天王:「澪さんなら、電話で席を外してますよ~」
神崎:「ふ~ん」
立花:「おい、玲司」
神崎:「あ、蓮・・・。途中まで一緒に戻ってたのに、何処に行ってたの?」
立花:「悪い・・・、ちょっと関係者に呼ばれてな・・・」
神崎:「それって、抜け駆けしたんじゃ!?」 (小声)
立花:「そうじゃない・・・。・・・予定していた監督のスピーチが遅れるみたいだ・・・」
神崎:「そうなの? 全く・・・、予定通りに進めて貰いたいものだよ・・・。
これだから・・・、スケジュールの好い加減な監督の作品は、始末に負えない・・・」
立花:「同意見だ・・・。若手監督って理由で世間から、注目を浴びたが・・・、
蓋を開ければ・・・、この程度・・・。
俺達を起用したのも、客寄せくらいにしか考えてないんだろうよ・・・」
神崎:「そうだよね~。・・・まっ、注目を浴びたおかげで、本命の監督や関係者からも、
声をかけて貰えたから、良かったけどね~」
立花:「ふっ・・・、ただ上手く利用されて終わるのは、癪だからな。
利用出来るうちに、利用するだけさ」
天王:「・・・」
間
神崎:「はぁ~・・・、こうして待つだけってのも辛い・・・。
一体、どんだけ待たせる気なんだよ・・・。
あれから、1時間、経つよ・・・」
立花:「流石に、他の共演者も、ざわつき始めたな・・・」
神崎:「もう、会場内の料理も・・・、俺、飽きた~。
それに、この後、予定していた予定も、間に合わないよ~・・・」
立花:「遅れる連絡は入れたのか?」
神崎:「はっきりとした時間、分からないから、まだだけど・・・」
立花:「それは、流石に不味いだろう・・・」
神崎:「そうはいってもさ・・・、あ・・・、マネージャーから電話だ・・・。
・・・ちょっと、行ってくる・・・。
はい・・・、もしもし・・・。・・・そう・・・、こっちも困ってるんだよ~・・・」
間
天王:「私は~、この後、何も予定が無いから、ずっと待ってられますよ~」
立花:「暢気な者だ・・・。お前達、アイドルと、俺達、芸能人を一緒に考えるな。
俺達は・・・、スケジュールがぎっしりなんだよ!
パッと注目されて、アイドル始めた、お前と違ってな・・・!」
天王:「立花さん、私に対して、意地悪です~。
私だって・・・、信念を持って、アイドルをやってるのに~!」
立花:「そうかよ・・・」
天王:「むぅううううううう!!」
久城:「もう、また喧嘩してるの? 本当、懲りないわよね・・・」
天王:「あ! 久城さ~ん!! お帰りなさ~い!!」
久城:「リルルちゃん、ただいま。
・・・蓮・・・、少しは、リルルちゃんと仲良くする努力してよ」
立花:「無理な相談だな」
久城:「貴方ね~」
天王:「私も、立花さんとは、無理だもん・・・。ベ~!!」
久城:「あらあら、すっかり嫌われちゃったわね。蓮」
立花:「嫌われて結構だ。
・・・それより、監督のスピーチが予定より大幅に遅れて、困っている所だ・・・」
久城:「ふ~ん・・・、なるほどね。・・・会場に戻ってからのざわつきに納得がいったわ。
私も・・・、この後・・・、大事な食事会があるのに・・・」
立花:「だから、会場に予定された料理にも、ほとんど手を出さないわけか」
久城:「そんな所よ・・・」
間
神崎:「ふ~、参ったよ・・・。マネージャーからのお説教が長かった~。
あれ? ・・・まだ、監督のスピーチ、始まってないの?」
久城:「お帰り・・・。・・・ええ、そうよ・・・。
予定していた時間から、1時間半・・・。流石に勘弁して欲しいわね・・・」
神崎:「何だ~・・・。残念・・・」
立花:「お前・・・、さては、終わる頃に、戻ってくる気だったろう?」
神崎:「流石、蓮。・・・名推理、お見事・・・。
今回の映画・・・、不在の誕生日でも、探偵役に抜擢されただけあるね」
立花:「何、馬鹿を言ってる。こんなの推理する程のものでも・・・」
久城:「二人共、黙って。・・・どうやら、監督のスピーチが始まるみたいよ」
立花:「やっとか・・・」
神崎:「あ、監督が出て来た」
立花:「散々待たせたくせに、あの満面の笑顔・・・。ムカつく・・・」
久城:「そうね・・・。あの顔は、遅れて来て、申し訳ない顔には見えない・・・」
天王:「監督の晴れ舞台なんだから~・・・、笑顔でも、リルルは良いと思うけどな~」
神崎:「リルルちゃんは、寛大だね・・・。でも、周りの表情、見て見なよ・・・。
今にも、暴動が起きそうだよ・・・」
久城:「あ~・・・、監督の自己紹介、長いわよ・・・。早く、本題に入ってよ・・・」
立花:「・・・」
神崎:「新人監督だから仕方ないけど・・・、注目されたい気持ちが勝ってるんだろうね・・・」
立花:「もう、我慢できない! ・・・俺、文句を言ってくる!」
神崎:「ちょっと待って! 流石に、それは駄目だって!」
久城:「そうよ! 蓮、落ち着いて! 幾ら何でも、あの監督も・・・。・・・え!? 何あれ!?」
天王:「監督が・・・、お爺ちゃんになってますよ~・・・」
立花:「何だと!? ・・・あれは、まさか!?」
神崎:「うん! 間違いない・・・。あれは・・・、若返りの副作用だよ・・・」
(一斉にパーティー会場がざわつき始める)
間
立花:(N)「見る見るうちに、若かった監督は、年を取り老人の姿に変わった・・・。
そして、苦しみ悶えだし・・・、動かなくなった・・・。
そう・・・。監督は・・・、心不全で亡くなったのだ・・・。
賑やかだった会場は、混乱に陥り・・・、
招待客は、一斉にホテルのパーティー会場から逃げ出そうとした。
だが・・・、パーティー会場の複数の入り口は開かなくなっており・・・、
俺達は・・・、何者かによって、閉じ込められたのだった・・・」
久城:「一体、どうなってるの!? ・・・そっちのドアは、どう・・・?」
神崎:「駄目だ・・・。開かない・・・」
立花:「こっちも駄目だ・・・。・・・外に、開かない仕掛けをしたのか、開かなくなってる・・・」
天王:「私達・・・、閉じ込められちゃったの・・・。リルル・・・、怖くて仕方ないよ~・・・。え~ん、え~ん!!!」
立花:「泣くな! 鬱陶しい!」
天王:「ひっ!!!」 (怒鳴られた恐怖で顔が青ざめる)
久城:「ちょっと! 何を言い出すのよ!」
立花:「そいつが、泣き出すから悪いんだ!!」
久城:「不安になって泣くのは、当たり前じゃない!」
神崎:「皆、落ち着いて! ・・・騒いで、混乱し出したら、閉じ込めた犯人の思う壺だよ・・・。
今、考えなきゃならないのは・・・、犯人探しと・・・、どうやって脱出するかだろう?」
久城:「そうよね・・・。私ったら、つい・・・。・・・ごめんなさい・・・」
立花:「俺は謝らない。・・・アイドル風情に謝って堪るか」
久城:「蓮!」
神崎:「蓮に謝って欲しいのは山々だけど、こればかりは仕方ないね・・・。
・・・澪・・・、リルルちゃんの事、お願いして良い?」
久城:「わかった、任せて。・・・ほらっ、リルルちゃん、向こうで、何か飲み物、飲みましょう・・・」
天王:「うん・・・」
間
神崎:「ふぅ~・・・」
立花:「一体、何を考えてる・・・」
神崎:「蓮も鈍いな~・・・。・・・これはチャンスなんだよ」
立花:「チャンス?」
神崎:「考えてもみなよ。・・・此処で、犯人の特定と会場から無事に脱出が出来たら・・・、
俺達の知名度は、爆上がりするでしょう?
本命の監督や関係者からも、命の恩人だと感謝をされる。
そうすれば、映画のオーディションを待たずに、彼らは、俺達を指名してくる。
こんな良い機会・・・、神様が与えてくれた人生のチャンスと考えないで、いつ考えるのさ!」
立花:「お前と居ると、全く飽きる事は無い・・・。そんな悪知恵が働くとはな・・・。
お前の筋書きだと、こんな所か・・・。
俺が、この後・・・、今回の映画の探偵・・・、久遠 順也(くおん じゅんや)のように、推理をし、犯人を探し出す。
そして、犯人を説得して、事件を解決して・・・、無事に此処から出る」
神崎:「・・・多少、筋書きとは違うけど・・・。流石、蓮・・・。俺のこと理解してる~」
立花:「そうなると・・・、まずは考えるのは、監督の殺害方法か・・・」
神崎:「ふっふん・・・。その殺害方法に関しては、俺・・・、見当が付いてるんだよ・・・」
立花:「何だと!? 詳しく話せ・・・」
間
(一方、天王を落ち着かせようとする久城)
天王:「・・・はぁ~・・・」
久城:「もう・・・、そんなに落ち込まなくても良いのよ。
悪いのは、蓮なんだから・・・。
それにしても・・・、アイドルデビューしてから、1年で映画にも出れるなんて・・・。
アイドル活動・・・、死ぬ気で頑張ったのね・・・」
天王:「エヘヘ・・・。リルルのこと、分かってくれるのは、久城さんだけかな~。
周りやアイドル仲間には、立花さんと同じように・・・、どんな手を使ったんだ~。
何で、お前だけが・・・、出られるんだ・・・。
監督と寝たに決まってるよね~とか・・・、色々、言われちゃった・・・」
久城:「芸能界なんて、そんな物よ。・・・少ない席に、座ろうと足の引っ張り合いをしている・・・。
私ね・・・。・・・常々思うの・・・。
その姿は・・・、まるで・・・、蜘蛛の糸のようだって・・・。
私も・・・、今は、蜘蛛の糸を登りきって、極楽と言う名の芸能界で活躍出来てるけど・・・、
いつ・・・、誰かに裏切られて・・・、地獄の底に舞い戻るかわからない・・・」
天王:「怖い世界なんだね・・・。リルル・・・、そんな世界で生きていけるかな~・・・」
久城:「そうやって弱音を吐いてる内は、無理ね」
天王:「え・・・?」
久城:「強くなりなさい。誰にも負けないくらい。
・・・私は・・・、そうして芸能界で生きてる・・・。
例え、地獄の底に落とされても・・・、再び蜘蛛の糸を登って、華やかな舞台に戻って見せる!」
天王:「・・・」
久城:「まじまじと顔を見て、どうしたの?」
天王:「久城さん、強~いな~って。・・・私も、そうなれるように頑張る~!」
久城:「その時には、強力なライバルになってよね。私も、容赦しないから!」
天王:「はい!」
久城:(M)「扱いやすい純粋な子よね・・・。・・・さて、どうしようかしら・・・。
さっきのあの様子だと・・・、恐らく、蓮と玲司は、何かしらの理由で、手を組んでる・・・。
待って、まさか・・・。・・・ううん、そうに違いない・・・。
だから、あの時・・・、玲司は、蓮に耳打ちしたのね・・・。
そう・・・、だったら今回の計画にも・・・、大いに役立ってもらおうじゃない・・・」
間
神崎:「話は以上だよ。・・・どう? 上手く演じられる?」
立花:「誰に物を言っている。当然だろう」
神崎:「心強い返事、ありがとう。・・・さぁ、俺達の舞台の幕開けだよ・・・」
間
久城:「あら? こっちに来るなんて、謝る気にもなった?」
立花:「いいや」
久城:「じゃあ、何の用かしら?」
立花:「お前は、黙って見ていろ」
久城:「え?」
立花:「会場に御集りの皆さん! お静かに!!
俺達は、何者かによって、この記念すべき、映画のパーティー会場に閉じ込められました。
だが、御安心ください!!
この立花 蓮が・・・、亡き監督の遺作、不在の誕生日の久遠 順也のように、
鮮やかに、解決して御覧に入れましょう!!」
神崎:「待って! ・・・蓮・・・、犯人は、この会場内に居るかもしれないんだよ。
下手に刺激を与えたら、かえって危ないんじゃ・・・」
立花:「だから君は、いつも考えが甘いんだよ・・・。影山 智臣(かげやま ともおみ)・・・。
犯人をあえて、炙り出す作戦に決まってるじゃないか・・・」
神崎:「・・・そうは言っても・・・、君は、そうやって、私の仕事を増やしている・・・。
君が身勝手な行動を起こすたびに、皺寄せを食らうのは、私達、医者側なんだ・・・」
立花:「文句を言う暇があるなら・・・、今回の殺害方法を特定しろ!」
久城:「・・・」
天王:「・・・」
立花:(M)「よしっ、思った通りだ・・・。いきなり始まった即興に、
澪とリルルは、付いて来れずに、傍観するだけになってる。
玲司の筋書き通り、会場の連中は、何が始まったのかと興味を持ちだした・・・。
ふっ・・・、本命の監督や関係者も、こっちを見てる・・・。
このまま、一気に会場の連中の注目をこっちに向けさせれば・・・」
(スポットライトが久城に集まる)
久城:「二人共、そこまでよ!! 貴方達は、そうやって、私を置いてけぼり!
そんなの、この刑事である、神原 紗英(かんばら さえ)が黙っておかないわ!」
立花:(M)「何だと!? ・・・何でこの即興に入って来られる・・・」
神崎:(M)「へぇ~・・・。俺達の即興を利用するだけじゃなく・・・、
更に、会場の証明を薄暗くして、スポットライトを使う・・・。
これは・・・、上手く使われたもんだ・・・。
照明機器を操作してるのは・・・、・・・澪のマネージャーか・・・。
さて・・・、どうしたものか・・・」
久城:「いつまで黙ってるつもり! それとも、犯人を炙り出す作戦とやらも、ただのはったりに過ぎないのかしら?」
立花:「そんなわけ無いだろう! ・・・影山、説明してやれ!」
神崎:「今回の殺人・・・。先ずは、監督が、新人監督ではなく、若返りを利用していた事に注目して貰いたい。
・・・皆も、目撃したように、被害者である彼は・・・、見る見るうちに、年を取り、老化していった。
これは、若返りの副作用が原因だ・・・。恐らく、彼は・・・、維持薬を打つことが出来なくて、死亡した・・・」
立花:「維持薬だと・・・。だとしたら、犯人は監督の身近に居たことになるな・・・」
神崎:「そう言う事になる。・・・少なくとも、2日前から、打ってなかったのだろう・・・」
久城:「そんな藪医者の見解なんて、信用出来るわけが無いでしょう!」
立花:「仮にも刑事が、医者に向かい、藪医者は聞き捨てならない。
影山は、これでも、俺と一緒に数々の難解な事件を解決して来たんだ!
今回の事件で、知り合ったお前とは、関係値が違い過ぎるんだよ!!」
久城:「くっ・・・。・・・ほらっ、貴女も・・・、何か言いなさいよ・・・」
天王:「あう・・・、リ・・・、リルルは・・・」
神崎:「はい! そこまで!
皆さん、いかがでしたでしょうか! 亡き監督の遺作、不在の誕生日。
俺達は・・・、この作品に関わった以上・・・、この手で、犯人を特定して、
皆さんを、安全に会場から、脱出させます!
どうか・・・、俺達の活躍を応援してください!」
立花:(M)「流石、玲司。・・・リルルが緊張して、即興に付いて来れないのを見て、
即座に機転を生かして、即興を終わらせた・・・。
澪がスポットライトまで使って、即興に加わった時は、冷っとしたが・・・、
俺の即興セリフも、会場の連中や本命にも、届いたはず・・・。
良いぞ。流れは、こっちに来てる・・・」
久城:「自分達だけ、目立とうとするなんて、狡いわね」
神崎:「そっちこそ、スポットライトまで、手配してるなんて、見事じゃないか。
流石・・・、舞台を経験してるマネージャーさんだね。
優秀な仕事ぶりで、羨ましくなったよ」
久城:「それ程でも無いわよ。・・・貴方達も、こそこそ組んだりして・・・、何が目的なのかしら?」
神崎:「目的? 何の話か分からないな。・・・ただ俺は、即興に入れず、
戸惑ってたリルルちゃんを助けただけだよ~。ね~、リルルちゃ~ん」
天王:「うん! リルル~、神崎さんのことも、好き~」
神崎:「ありがとう、ファンになってくれるなら、いつでも歓迎するよ」
久城:「この女たらし・・・。
・・・それで、即興の成果は、どうなの・・・?」
立花:「特に目立った動きや、即興のときに、不審な反応をした人物は居なかった・・・」
久城:「そう・・・、余程、犯人は、肝が据わってるみたいね・・・。貴方達のように・・・」
立花:「何を言い出すかと思えば・・・、今度は俺達を疑うのか・・・?」
久城:「あら? ミステリー物では、定番の展開でしょう?
貴方達、二人は・・・、監督の作品に文句を付けてた・・・。
それに、どちらも・・・、会場から抜け出して居なかった・・・。
監督が居る控室に行って、維持薬を偽物にすり替える事も出来るわよね
ほらっ、完璧な推理じゃない」
神崎:「待ってよ、澪。・・・それが完璧だなんて、余りにも雑過ぎる。
それに・・・、君も、会場から抜け出して・・・、暫く居なかった・・・。
監督の控室に行って、細工する事も出来たはずだよ・・・」
久城:「とんだ言いがかりね! 私はマネージャーから、電話が掛かって来たから、抜け出したの!」
神崎:「・・・そうか、分かった! ・・・監督の部屋に行って、偽物とすり替えたのは、やはり澪だ!」
久城:「どうして、そうなるのよ!」
神崎:「先ず、監督の部屋に向かう。そして、相談があるんですなどと言って、監督の部屋に入る。
・・・暫くすると、監督に電話が掛かってくる・・・。
監督が電話してる間に、・・・偽物とすり替える・・・。・・・ほら、可能でしょう」
立花:「久城のマネージャーは、優秀だ・・・。俺も玲司の推理は納得できる」
久城:「そんな・・・」
神崎:「ありがとう、蓮」
天王:「リルルは・・・、立花さんが怪しいと思う・・・」
立花:「何だと?」
天王:「立花さんは、無くなった監督と、何度も言い争ってたの、リルル、目撃したんだから~!!!」
久城:「え!? リルルちゃん! 詳しく話して!」
天王:「うん! あれは、映画の撮影が中盤に差し掛かった頃だった。
リルルが、今回の演技に悩んで、相談に行った時・・・、
凄い剣幕で言い争ってた・・・」
立花:「お前! あの時、近くに居たのか! ・・・あ・・・」
久城:「どうやら、本当のことみたいね」
立花:「くそっ・・・」
久城:「よく映画で、犯人が思わず反応するシーンがあるけど・・・、
これはもう・・・、動かぬ証拠ね!」
立花:「ふざけるな! 俺はすり替えていない!!」
神崎:「蓮・・・。・・・監督と争ったことは聞いてないよ。・・・全く・・・、大事な時期なのに・・・」
立花:「俺は、ただ・・・、今回の終盤の展開が納得いかなくて、監督に抗議に行っただけだ・・・。
冷静に、意見を言っただけなのに・・・、あいつは、切れだして・・・。
勢いに流されるのも、癪だったから、つい・・・、俺も怒鳴ってしまったんだ・・・」
久城:「その現場を、リルルちゃんは聞いたわけね。
ねぇ、その時に・・・、蓮は監督を殴ったりしてなかった?」
立花:「お前な!!!」
天王:「・・・声だけ聞こえて、姿は見てないから分からない・・・」
久城:「そう・・・」
立花:「ほらっ、これで俺の潔白は証明された!!!」
久城:「まだ潔白が証明されたわけではないわよ・・・。
少なくとも・・・、この中で、監督を殺す動機としては、貴方が一番強いのだから・・・」
立花:「くっ・・・」
立花:(N)「澪の一言で、再び会場がざわつき始める。
誰もが、俺を見ては、軽蔑の眼差しや、疑いの眼差しを向けてくるのが分かった・・・。
このままでは・・・、犯人扱いされて、芸能界から抹消される・・・。
そう、思った時だった・・・。監督の遺体の周りに集まってた関係者が・・・、
監督のスマホから、犯人に繋がる証拠動画を見つけたと騒ぎ始めた・・・」
久城:「証拠動画ですって・・・!」
神崎:「どんな動画か気になるね。あっちに行ってみよう」
天王:「・・・」
立花:「・・・」
間
(監督の遺体の近くに落ちていたスマホ)
神崎:「ごめん・・・、皆・・・、通して・・・」
立花:「これが、監督のスマホか・・・」
久城:「私にも、見せて。・・・どの動画?」
立花:「どうやら、この動画みたいだな」
神崎:「蓮・・・、再生してみて」
立花:「あぁ・・・」
久城:「何これ・・・。部屋が映ってる・・・」
神崎:「これは・・・、監督の家の部屋? でも、何だか映し方が変だね・・・」
久城:「分かった・・・。これ隠し撮りなのよ・・・。でも、どうして、隠し撮りなんか・・・」
立花:「監督が部屋に入って来たぞ・・・。ん? 後ろに、誰か居る・・・。これは・・・、20代後半の女性か・・・?」
久城:「えぇ、そうね。・・・年齢は、蓮の言う通り、20代後半・・・。でも、何処かで見かけたような・・・」
立花:「監督と何か話してるみたいだな・・・。・・・何だ? 監督が、慌てて部屋から出て行った・・・」
神崎:「・・・あ、女性が席から立ったよ・・・。何か、探してるみたいだけど・・・、焦ってる様子だね・・・」
久城:「・・・監督の鞄を開けた・・・。そして、中に入ってたケースを開けた・・・。・・・あれは・・・、注射器・・・?」
立花:「おい・・・、今、手に持ってた何かと入れ替えなかったか?」
神崎:「え? う~ん、よく見えなかったな・・・」
立花:「少し、巻き戻す」
久城:「ええ・・・。・・・本当だ・・・。・・・何か入れ替えてる・・・」
神崎:「ケースを鞄に戻したね・・・。・・・あ、監督が戻って来た・・・」
立花:「・・・監督と会話を再開したな・・・。・・・あ、此処で動画は終わってる・・・。
一体、この女は誰なんだ・・・」
久城:「そうか、分かった。・・・誰かに似てるなと思ってたけど、この女性、リルルちゃんに似てるのよ!」
立花:「言われてみれば、そうだ! でも、リルルより、年齢は、上に見えるが・・・」
神崎:「リルルちゃんのお姉ちゃんとかかな・・・?」
天王:「・・・いいえ、そこに映ってるのは私よ・・・」
久城:「え?」
天王:「まさか、あの監督・・・。・・・隠し撮りまでしてたとはね・・・」
立花:「リルル・・・。お前が監督を殺した犯人なのか・・・?」
天王:「ええ、そうよ・・・」
久城:「殺そうとした動機は何なの・・・?」
天王:「動機・・・。それを話すには、まず私が誰なのか・・・、教えなきゃいけないわね。
私は・・・、夢野 紫苑(ゆめの しおん)・・・」
立花:「夢野 紫苑だと!?」
久城:「確か・・・、当時、大活躍していた女優だったけど・・・、
年老いてからは、芸能界から姿を消したと・・・、記事で読んだことがある・・・」
天王:「その通りよ・・・。私は芸能界の仕事が・・・、女優として、演技をするのが・・・、生きがいだった・・・。
でも・・・、仕事が無くなり、女優としても見向きもされなくなって、悩んでたときに・・・、
若返りの臨床実験を知り・・・、駄目元で、被験者に応募したのよ・・・。
そうしたら、見事受かり・・・、私は・・・、若返る事が出来た・・・」
久城:「・・・まさか、最初の被験者だなんて・・・。・・・でも待って。
女優が生きがいなら、どうして今はロリ系アイドルなんて、やっていたの・・・?」
神崎:「それは、恐らく・・・、若返りが当たり前になって、芸能界の大御所が引退しなくなった事に、関係するんだと思うよ」
天王:「神崎さんの言う通りよ。
・・・若返りが浸透する前は・・・、名前も変えて、新人女優として、活躍できた・・・。
しかし・・・、浸透し始めてからは・・・、その問題が起き始めて・・・、
貴方達も、知っての通り・・・、芸能界で活躍出来る人数が、限られてきたのよ・・・。
私は・・・、その時・・・、若返りの技術を呪ったわ・・・。
私の人生を救った技術が・・・、今度は、私の人生・・・、生きがいを奪おうとするのだから・・・」
立花:「でも、諦めきれずに、違う方法で、芸能界を目指し・・・、再び女優に戻ろうとしたわけか・・・。
恐ろしいまでの執念だな・・・」
天王:「貴方達には、私の気持ちなど、理解出来なくて当然よ・・・。
我儘に振舞い、関係者を貶す暴君・・・。
ファン達に、ヒエラルキーを認識させて、飼いならすタラシ野郎・・・。
気に入らない新人は、泣かして叩き潰す女帝・・・。
揃いも揃って・・・、クズばかりじゃない・・・!!」
立花:「・・・」
神崎:「・・・」
久城:「・・・」
天王:「貴方達と同じように、あの監督もクズだった・・・。
私の過去を調べ上げて・・・、呼び出しては、金を要求して来たわ・・・。
数百年も、生きてる化け物は、さぞかし、お金も貯めこんでるだろうなって・・・!
私は・・・、我慢の限界が来て・・・、今回の犯行を思いついたの・・・。
あいつも・・・、新人と偽った若返りの常連なのは、調べて分かったから・・・、
2日前に会った時に・・・、維持薬を偽物にすり替えたわ・・・」
立花:「一つ、疑問が残ってる。監督に呼び出されてた時のお前は、今より成長していた。あれは、どうして?」
天王:「簡単よ・・・。あいつは、私自身も求めて来たの・・・。
但し、ロリの姿は好みじゃないから・・・、
あの姿になれって・・・」
久城:「待ってよ。若返りの技術以外に、成長させる技術もあるというの・・・?」
神崎:「ファン達から、聞いた事あるよ・・・。まだ政府に認可はされてない技術だけど・・・、
一部の金持ちの間では・・・、密かに浸透し始めていると・・・」
天王:「そうよ・・・。・・・技術は存在している・・・。
でも・・・、リスクも・・・、あるのよ・・・。ごほっごほっ・・・。
ふっ・・・、どうやら、タイムリミットのようね・・・」
久城:「貴方・・・、その血・・・」
天王:「・・・これが、そのリスクよ・・・。
何度も・・・、若返りと・・・、成長を繰り返したから・・・、
私の体は・・・、もう・・・、限界が来てる・・・。
・・・でもね・・・、私は・・・、この今の芸能界を、このままにして死ぬ気はない・・・。
・・・皆・・・、道連れよ・・・!!」 (スマホのボタンを押す)
(爆破音と同時に、舞台の左右から、炎が上がり出す)
立花:「何だ!? 何処かで爆発か!?」
神崎:「予め、この会場や、ホテルに設置した爆弾だろうね・・・」
久城:「それって、私達や此処に集まった関係者・・・、全員、殺す計画だったってこと・・・!?」
天王:「ええ、そうよ・・・。・・・此処に集まる全員、例外なく、そのつもりよ。
・・・皆、それぞれの罪は・・・、償って貰わないとね。
この会場に居る皆で・・・、この汚れた芸能界を正すの!!!
ふふふふ・・・。きゃはははははは!!!!」(狂った笑い声)
神崎:「どうにか脱出する手を探さないと・・・」
久城:「リルルちゃん・・・。・・・夢野 紫苑は、置いていくの?」
神崎:「残念だけど・・・、もう俺達の声は届かないよ・・・」
天王:「ねぇ~! 真っ赤な炎の中で、踊る私~! 太陽神に焼かれ、怒り狂う大地の女神のように、魅力的よね~!!!
・・・。
・・・大丈夫~!!! 何も怖くない!! 死は、一つの始まりに過ぎない!!
不条理な世の中を捨てて・・・、皆で、平等で幸せな世界に旅立ちましょう!!!」
久城:「・・・嘘。・・・この黒煙と、炎の中で・・・、どうして・・・、あんなにも、楽しい表情で、踊れるのよ・・・!?」
立花:「おいっ! 何してる!!! ・・・そんな化け物、放って置け!!!」
久城:「圧倒される・・・。逃げなきゃ駄目だと思うのに・・・、夢野 紫苑の演技から目が離せない・・・!!
・・・これが・・・、本当の・・・、女優の力だと言うの・・・」
立花:「くっ・・・、澪は、飲み込まれてる・・・。・・・玲司・・・、俺達だけでも・・・!! ん!?」
神崎:「逃げるなんて失礼だよ・・・。まだ、夢野 紫苑の舞台の最中じゃないか・・・」
立花:「玲司・・・。どうしたんだ・・・」
久城:「何て綺麗なの・・・。・・・蓮・・・、最後まで観なきゃ失礼よ・・・」
立花:「おい、お前まで、何を言って・・・」
立花:(N)「その時だった・・・。俺は、気付いてしまった・・・。
爆破が起きて、燃え始めた会場から逃げようと騒いでた、俳優や女優・・・。関係者迄もが・・・、
夢野 紫苑の演技に、引き込まれて・・・、逃げるのも忘れて、虜になってるのを・・・」
立花:「俺は絶対に認めない・・・。こんな場所で・・・、こんな死に方して堪るか!!!」
久城:「待ちなさい・・・!! 抜け駆けは駄目って言ったでしょう!!」
立花:「何をする・・・、手を放せ!!!」
神崎:「そうだよ・・・!!! 皆で~、幸せにならなきゃ・・・!!」
立花:「止めろ!! 俺は、お前達と心中はごめんだ!!!」
久城:「皆~!! 彼は反逆者よ!!! 私達の考えが分からないなんて、可哀想と思わない!?」
立花:(N)「澪の呼びかけに応えて、皆が俺の手足を引っ張りだした」
久城:「そう! 皆、良いわよ~!!! これよ!!! この姿こそ、人間の本質、そのもの!!!
これが観たかったの~!! あはっ!!! あはははははは!!!」
立花:「止めるんだ・・・!! ・・・俺は・・・、死にたく・・・!!」
神崎:「怯えないで良いんだ!! さぁ、皆で旅だとう!!! あははははははは!!!」
天王:「さぁ~!! 私の可愛い愛する我が子達よ~!! 共に行きましょう~!!!」
立花:「嫌だあああああああああ!!!! 誰か俺を助けてくれえええええええええ!!!!」
(天井が崩れて、会場の炎が燃え広がる)
間
アナウンサー:「当初、予定していた番組を変更して、緊急特番を放送致します。
先週、都内ホテルで起きた焼身事件により・・・、
若返りの技術を廃止するべきではとの意見も多く聞こえるようになりました。
関係者、各位は、今回の事件を重く捉えて・・・、次のように、述べています・・・」
(病院の病室。ブツブツ、呟いている立花)
立花:「・・・ホノオ・・・、コワイ・・・。・・・演技・・・、モウイヤダ・・・。
・・・人間・・・、・・・シンジラレナイ・・・。
俺は・・・、何者にもなれない・・・。・・・ははっ・・・、きゃはははははは・・・!!!」
間
久城:「あら? 貴方達も来てたの・・・」
天王:「どう? 彼の様子」
久城:「精神が崩壊したそうよ」
天王:「そう・・・。私達の計画は、上手く言ったのね」
神崎:「そうなるね。・・・彼に悟られないようにするのは、苦労したよ・・・。
・・・若返りについて、真実を暴かれそうになった時は・・・、もう駄目かと思った・・・。
会場から出られない仕掛けの準備も・・・、お疲れ様・・・」
天王:「それなりに苦労したわよ・・・。会場の扉が電子式だから・・・、ハッカーに頼んだり・・・。
でも・・・、二人の演技のおかげで・・・、彼を欺き・・・、
あの憎たらしい新人監督も殺す事が出来た・・・。
そして・・・、世間も・・・、上手く騙せたわ・・・。
・・・私の代わりを演じてくれた・・・、玲司が雇った新人役者にも・・・、感謝しないとね・・・」
久城:「あら、その言葉・・・。土の中で眠ってる彼女にも・・・、届いてると良いわね・・・」
神崎:「二人共、怖いね・・・。
此処まで俺が成功したのは、君が、若返りの最初の被験者になってくれたからだよ、紫苑・・・。
開発した始めは、自信が無かった俺を・・・、励ましてくれた事・・・、何百年経っても、忘れない・・・。
そして・・・、俺達を支援し続けた、澪の親族にも、感謝しないとね・・・!!」
久城:「ふふふ・・・。・・・こんな技術・・・。・・・手放せる訳無いじゃない・・・。
世間に広がり過ぎて、特別感が無かった若返りも・・・、
これからは、私達・・・、選ばれた者だけの物・・・。・・・じっくり堪能しましょう!!」
天王:「ええ、そうね!! ・・・若返りの技術に、乾杯!!!」
(三人、揃って乾杯する)
立花:「・・・演技・・・。・・・怖い・・・。人間、コワイ・・・。
・・・でも・・・、絶対に止められない・・・!!! ヒヒッ!!!」
終わり