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悄然のスノー・クリスタル

 


作者:片摩 廣

 

登場人物

 


藤宮 紗羅(ふじみや さら)・・・明るく気丈な女性。26歳
                  小さなギャラリーを運営しているイラストレーター。
                     心臓に先天的な疾患を抱えており、無理をすると死の危険もあるが、

                   普段はそれなりに生活が出来てる。

神谷 奏太(かみや そうた)・・・紗羅の恋人。誠実な会社員。27歳
                 高校生の頃、紗羅の病気を知ってからは、支え続けているが、

                 彼女の、ある願いだけは叶えてあげられないでいる。

桐生 悠真(きりゅう ゆうま)・・・紗羅の幼なじみ。26歳
                  海外で活動する、オネエの写真家。 奏太とは親友でもある。

 

比率:【2:1】


上演時間:【60分】

オンリーONEシナリオ2526

12月、クリスマス、テーマにしたシナリオ

 

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CAST

藤宮 紗羅:

神谷 奏太:

桐生 悠真:


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(ギャラリー内、夜。窓の外には雪が舞う)

(紗羅が作品を整理していると、奏太がそっと入ってくる)

 


神谷:「紗羅、今日は・・・、雪が凄いな。外、大丈夫・・・?」


藤宮:「うん、大丈夫。雪・・・、綺麗だね・・・」


神谷:「本当に大丈夫? 無理してないか?」


藤宮:「奏太・・・、心配しなくても大丈夫。今日くらいは、普通に楽しみたいの・・・」

 


(ギャラリーのドアがノックされる)

 


桐生:「な~に~、こんなところで二人きり?
    ま、まさか、私の大事な紗羅を独り占めしてるんじゃないでしょうね〜?」

 


藤宮:「悠真・・・、帰ってきたの?」


桐生:「あら、私・・・、お邪魔だったかしら・・・」


神谷:「悠真・・・、久しぶりだな・・・」


桐生:「フフ、あらあら・・・、なんだか凄い空気ね。
    ・・・紗羅は、どっちのものかしら〜?」


藤宮:「悠真・・・、もう! そんなふうに言わないで・・・」


神谷:「悠真、流石に今のは冗談だよな・・・?」


桐生:「冗談じゃないわよ・・・。
    奏太・・・、紗羅は昔も今も、あたしにとって特別な子なんだから。
    それを忘れちゃ困るわね」


藤宮:「今日は・・・、ただ普通に、クリスマスイヴを過ごしたいだけなのに・・・」

 


神谷:(M)「紗羅・・・、どうしてこんなにも儚いんだ・・・。
      無理をしてまで笑うなよ・・・。
      俺は、ただ・・・、お前の側に、居たいだけなのに・・・」

桐生:「ねぇ、久しぶりに三人、揃ったんだから、ぱぁ~と、パーティーして盛り上がりましょう!!
    私の帰国祝いも兼ねて!!」


藤宮:「うん・・・! 向こうでの話、沢山、聞かせてね・・・」


桐生:「勿論よ~。二人共、今夜は、寝かさないんだから~」


神谷:「お手柔らかにな・・・」


藤宮:「そうと決まれば、買い出しに言ったりだね。・・・えっと・・・、まずは・・・、ゴホッゴホッ・・・」


神谷:「紗羅、大丈夫か・・・!?」


藤宮:「大丈夫・・・、いつもの発作だから・・・。暫くしたら、良くなるよ・・・。あれ・・・、可笑しいな・・・」


神谷:「おいっ、紗羅! 返事しろ!」


桐生:「奏太! もう! しっかりしなさい!」


神谷:「悠真・・・」


桐生:「良いから、ギャラリーの仮眠室に、紗羅を運ぶわよ。手伝って」


神谷:「・・・あぁ、分かった」

 


桐生:「紗羅・・・」


神谷:「悠真・・・俺、どうしよう・・・。このままじゃ・・・」


桐生:「大丈夫よ・・・。落ち着いて。・・・ほら、慎重に・・・、そのままベッドに寝かせるわよ」


神谷:「おう・・・」


桐生:「よし・・・、これで一先ず、様子を見ましょう・・・」

 


神谷:「・・・悠真、俺・・・、紗羅を守りたいんだ。
    でも、俺が出来ることって・・・、少ないかもしれない・・・」


桐生:「弱気にならないで。・・・あんたは、あんたなりに頑張ってるじゃない・・・。
    それを、紗羅も、ちゃんと見てるわよ」


神谷:「悠真・・・、海外での活動は、どうだった?」

 


桐生:「そうね・・・。写真を撮るだけじゃなくて、街の人々の生活とか、文化とか・・・、色々勉強になったわ。
    でも、やっぱり日本の方が落ち着くかもね~。
    海外の食事も、見た目、鮮やかだったり、豪華だったけど~、
    ふとした瞬間に・・・、日本の食事が、恋しくなったのよね~」

 


桐生:「白いご飯と、漬物と、お味噌汁」


神谷:「白いご飯と、漬物と、お味噌汁」(同時に)


桐生:「まぁ~、うふふふ・・・。・・・私の口癖、覚えてたのね~」


神谷:「当たり前だろう~。どんだけ長い付き合いだと思ってんだよ」


桐生:「あんたとの腐れ縁も、気付けば11年か~・・・」


神谷:「何だよ、酷い言い方だな~・・・」


桐生:「仕方ないでしょう~。オネエは、口が悪い生き物なのよ~」


神谷:「なら仕方ないか。はっはははは」


桐生:「ねぇ、覚えてる? 私達、3人の出会ったときの事」


神谷:「覚えてるよ・・・。あれは、今日みたいに、雪の降るクリスマスだった・・・」

 

(16歳、高校1年生の頃)

(学校の帰り道)

 

藤宮:「あ~あ、世間は、クリスマスムードで華やかなのに、私達は、いつもと変わらないね~!」


桐生:「当然よ~。部活に慣れるのに、必死なんですもの~。恋をする暇なんて無いわよ・・・」


藤宮:「それもそうね~。・・・それに私は、健康面も問題があるから・・・、夢のまた夢よね・・・」


桐生:「紗羅・・・」


神谷:「うわああああっ!!! ・・・。・・・痛たたた・・・」



藤宮:「ねぇ、あそこ見て。雪で滑った人が居る。・・・あの制服、私達と同じ学校の生徒だ・・・」


桐生:「あらら~、派手に転んだものね~。・・・紗羅、助けに行くわよ!」


藤宮:「うん・・・!」



神谷:「はぁ~・・・、今日は朝から、付いてない・・・。あ~もう!! 俺が一体、何をしたって言うんだよ~!!」


藤宮:「あの~、大丈夫ですか~?」


神谷:「・・・大丈夫に見えるか・・・?」


藤宮:「あ・・・、その・・・」


桐生:「ちょっと、その言い方は無いんじゃない?」


神谷:「誰だよ、お前・・・」


桐生:「私は、桐生 悠真。・・・この子の親友よ!」


神谷:「へぇ~・・・、そうか・・・、二人して、笑いに来たわけか?」


桐生:「まぁ! 何よ、その考え方!!!」


藤宮:「もう、落ち着いて・・・! 悠真・・・!」


神谷:「助けに来てくれて、ありがとう。じゃあ」


桐生:「何よ! その心の籠ってない御礼は!! ちょっと、あんた!! 待ちなさいよ~!!」

 


(過去の回想、終了)

 



(ギャラリーの仮眠室)

神谷:「俺達の初めての出会いは、こんな感じだったか~」


桐生:「ええ、そうね。今、思い出しても、人生で最悪の出会いだったわよ・・・」


神谷:「おいおい・・・。俺、そんなに最初の印象、最悪だったのか・・・?」


桐生:「そうよ! いきなり助けてくれた相手に、悪態付くんですもの・・・。
    でも、思い出すのが、その時とは、あんたらしいわね・・・」


神谷:「え? お前の考えてた出会いのときと違うのか?」


桐生:「当然じゃない。私の言ってた出会いは、高校の部活の事よ・・・」

 

 


(高校、放課後、美術部前)

藤宮:「ねぇ~・・・、悠真~・・・」


桐生:「嫌ったら、嫌~」


藤宮:「そんな冷たい~。・・・私達の仲じゃな~い・・・!」

 


桐生:「あのね~、何処の世界に、部活初日に、
    違う部員の私が、一緒に美術部に行かないと行けないのよ~。
    私は、あんたの保護者じゃ無いって~の!」

 


藤宮:「ほらっ・・・、今日は部活のオリエンテーションだから・・・、
    この際・・・、悠真も美術部に~」


桐生:「はぁ? 私は、写真部に入るんだから、絶対に嫌よ・・・!」


藤宮:「写真部なら、幽霊部員も出来るし・・・、この際、掛け持ちでも~」


桐生:「紗羅・・・、あんたね~・・・!!」


神谷:「おい、お前達・・・、人の部室の前で、何、言い争ってんだ・・・?」


桐生:「あんたには、関係ないでしょう! 放っておいて!! って、あああああああああああああ!!!」


神谷:「げっ・・・、お前は・・・、あの時の・・・」


桐生:「うふふふ・・・、此処であったら、なんちゃらよ~!! 覚悟しなさあああああああいいいい!!!」

 

 


(ギャラリーの仮眠室)


神谷:「おい・・・、これの何処が良い出会いの思い出だよ・・・」


桐生:「・・・そうね、思い出せば、思い出すほど、あんたをボコボコにしてた記憶が浮かんでくるのよね~」


神谷:「お前な~・・・。・・・。・・・まぁ、でも、優しいよな~。
    結局、紗羅の為に、部活、掛け持ちしたんだから・・・」


桐生:「あんたが、美術部の部員だと知って、そのまま、私の可愛い紗羅を、一人で美術部に入れられるわけ、無いでしょう?」


神谷:「そうだな・・・。・・・あの頃のお前は・・・、いつも・・・」

 

 


(高校、美術部、部室)

 

藤宮:「う~ん・・・、上手くデッサン、出来ない・・・」


神谷:「どれどれ・・・。あ・・・、もう少し、全体を見て、空間も意識してみて」


藤宮:「はい・・・」


神谷:「・・・そうそう、良い調子。・・・う~ん。・・・あ、そこは・・・」


藤宮:「あ・・・、先輩・・・」


桐生:「はい、ストップ! ・・・神谷先輩~、紗羅に近付きすぎよ~!」


神谷:「なんだと!?」


桐生:「紗羅・・・、何処も触られてない? 
    良いこと? ・・・あんな感じに迫られたら、持ってる鉛筆を先輩の腕に素早く突き刺すの・・・」


神谷:「言ってる事が、怖いから!」


藤宮:「もう・・・! そんな怖いこと・・・、私・・・、出来ないよ~・・・」


神谷:「そうだ、そうだ。・・・藤宮さんは、そんな事はしない! お前と違ってな!」


桐生:「あ~ら? 今、何て言ったのかしら? 今すぐにでも、先輩の手に、鉛筆の剣山を作って差し上げましょうか~?」


神谷:「ほう~、やれるものなら、やってみろ~!」


藤宮:「もう!! 好い加減にして!!」


桐生:「紗羅・・・」


神谷:「藤宮さん・・・」


藤宮:「私は・・・、そんなに守って貰わなくても大丈夫だから・・・。
    悠真・・・、先輩に酷い事しないで・・・」


桐生:「・・・ごめんなさい。・・・私、どうかしてた・・・。少し外で頭を冷やしてくるわね・・・」


藤宮:「待って・・・。私、そこまでして欲しいとは、望んでないよ・・・。悠真!! うっ・・・ゴホッゴホッ!!」


神谷:「え? 藤宮さん、どうしたんだ!?」


桐生:「紗羅・・・!! ・・・あんた、薬は・・・!?」


藤宮:「ゴホッゴホッ・・・!! ・・・鞄の中・・・」


桐生:「そう、待ってなさい! 持ってくる!」


藤宮:「ありがとう・・・。・・・悠真・・・」

 


 


神谷:「おい・・・、俺にも、何か出来る事は?」


桐生:「薬を飲ませるから、水を用意して」


神谷:「分かったよ」


藤宮:「ゴホッゴホッ・・・」


桐生:「紗羅・・・、薬よ・・・」


藤宮:「ありがとう・・・」


神谷:「ほらっ、水だ・・・」


藤宮:「先輩も、ありがとう・・・、ございます・・・。
    ・・・。・・・はぁ~・・・」  (薬を水で飲む)


桐生:「ふぅ~・・・、もう、安心ね・・・」


神谷:「おい、説明してくれないか?」


桐生:「そうね・・・。実は、この子・・・」


藤宮:「待って、悠真・・・。私から話す・・・」


桐生:「わかったわ・・・」

 


藤宮:「・・・私ね・・・、心臓に先天的な疾患を抱えているんだ・・・。
    だから、医者に処方された、この薬を飲まないと・・・、あんな風に発作が出ると危険なの・・・」

 


神谷:「先天的な疾患・・・。あ・・・、その・・・」


藤宮:「別に気を使わなくて平気だよ。・・・皆、この話を聞いたら、同じ顔で私を見つめるから・・・、慣れてる・・・」


神谷:「ごめん・・・」


藤宮:「ただ一人・・・、私の、この病気を知っても、態度が変わらなかったのが・・・、此処に居る悠真だよ・・・」

 


桐生:「紗羅のこと・・・、知らない男達は・・・、あんたみたいに、距離を考えずに近付いて来たわ・・・。
    そして、この事を知ると・・・、皆が途端に、まるで腫物にでも触れるかのように接し始めた・・・。
    私は・・・、そんな男達が許せなかった・・・!
    だから・・・、さっきみたいな態度を、あんたに取ってしまったの・・・。ごめんなさい・・・」

 


神谷:「そんな理由だったのなら、許すよ・・・。
    それに心配しないで良い。・・・驚きはしたけど、彼女に、そんな風に接するつもりは無いよ」


桐生:「あんた・・・、優しい部分もあるんだ・・・」


神谷:「棘のある言い方だな・・・」


桐生:「これでも褒めてるのよ、失礼ね~」


藤宮:「先輩・・・、嬉しい・・・です・・・。・・・あの・・・」


神谷:「ん・・・? どうした?」


藤宮:「え? あ・・・、いや・・・、その・・・」(照れながら)


桐生:「ふ~ん、どうやら、お邪魔虫のようね・・・。
    ・・・少し写真部の様子でも見てくるわね~」


神谷:「待てよ、おいっ!!」


桐生:「二人共~、ごゆっくり~!」


(ギャラリーの仮眠室)

神谷:「あの後・・・、いきなり二人っきりにされて、大変だったんだからな~」


桐生:「あら、・・・でも、そのお陰で、あんたと、紗羅は、急接近出来たじゃ無いの~。
    感謝して欲しいくらいよ~」


神谷:「お前な~。・・・でも、そうだな・・・。お前のおかげだよ。ありがとうな、悠真」


桐生:「もう、いきなり素直にならないでよ・・・!! こっちにも、心の準備があるんだから・・・」


神谷:「ん? 何のだ・・・?」


桐生:「この・・・、鈍感野郎・・・」


藤宮:「ん・・・、ん・・・、あれ? 私・・・」


桐生:「紗羅~・・・、良かった~・・・」


藤宮:「どうしたの? 悠真・・・?」


神谷:「紗羅・・・、いきなり倒れたから・・・、俺と悠真は、心配したんだ・・・」


藤宮:「そっか・・・。ごめんね・・・。・・・少しはしゃぎ過ぎちゃった・・・。
    ・・・高校の頃は、もっとはしゃいでも、平気だったのにな~・・・」


桐生:「今は、冬なんだから、無茶は駄目よ。・・・今日は、もう家に帰って休むこと。わかった?」


藤宮:「えへへ・・・。悠真に言われちゃったら、従うしかないな・・・」


桐生:「良い子ね。それと、奏太・・・」


神谷:「ん?」


桐生:「紗羅を、ちゃんと家まで送りなさいよ」


神谷:「言われなくても、そうする」


桐生:「そう、任せたわよ」


藤宮:「え? 悠真も、一緒に送ってくれないの・・・?」


桐生:「ごめんなさいね・・・。・・・急用を思い出したの。
    だから・・・、クリスマスパーティーは、明日にしましょう!」


藤宮:「うん・・・、分かった・・・。約束だからね・・・」


桐生:「約束よ。・・・じゃあ私、行くわね」


神谷:「気を付けて、帰れよ」


桐生:「ええ、あんた達もね」


藤宮:「悠真・・・」


神谷:「・・・じゃあ、俺達も行くか・・・」


藤宮:「うん・・・」

 


 


(ギャラリーの外に出る奏太と紗羅)

神谷:「はぁ~・・・ (息を吐く)
    ・・・外・・・、だいぶ冷えてるな~・・・。
    ギャラリーの戸締りは、出来たか・・・?」

 


藤宮:「うん・・・。大丈夫・・・。
    はぁ~・・・ (息を吐く)
    本当だ・・・。・・・息が白くなってる・・・。うっ・・・、ゴホッゴホッ・・・」

 


神谷:「ほら、また無茶をするから・・・。・・・もっとこっちに来い」


藤宮:「うん・・・」


神谷:「寒くないか・・・?」


藤宮:「平気・・・。・・・奏太の体温・・・、温かいね・・・」


神谷:「馬鹿・・・。いちいち、恥ずかしい事、言うなよ・・・」


藤宮:「えへへ・・・。・・・あっ、奏太、見て・・・。雪・・・」


神谷:「本当だ・・・。・・・綺麗だな・・・」


藤宮:「うん・・・」(照れながら)

 


 


桐生:「そうよ・・・、奏太・・・。・・・ちゃんと紗羅を送りなさい・・・。
    今日は、クリスマスイヴ・・・、恋人達の特別な日よ。
    そんな大事な日・・・。
    あんた達の邪魔は・・・、出来ないわよ・・・」

 


 


神谷:「街中、イルミネーションで綺麗だな・・・」


藤宮:「うん、クリスマスで、皆、幸せな顔してるね・・・。
    ・・・ねぇ、奏太・・・」


神谷:「ん・・・?」


藤宮:「私・・・、来年も・・・、こうして、奏太と一緒に居られるかな・・・」

 


神谷:「何を馬鹿な事、言ってるんだ・・・。
    当たり前だろう。・・・来年も、そのまた再来年も、ずっと一緒だ・・・」


藤宮:「私ね・・・、夢があるの・・・。
    あのギャラリーが、沢山のお客様で埋め尽くされるのが・・・、見たいんだ・・・」


神谷:「素敵な夢だな。・・・俺も見てみたい。
    その沢山のお客様を見て・・・、喜ぶ紗羅の笑顔を・・・」


藤宮:「奏太・・・。・・・うん、私も、その笑顔を見て、優しく微笑む奏太が見てみたい・・・」


神谷:「おい・・・、俺の夢を盗るなよ~」


藤宮:「良いでしょう? 大好きな人の夢なんだから・・・、共有しても・・・」


神谷:「紗羅・・・。今の笑顔はずるい・・・」(照れる)


藤宮:「え・・・?」


神谷:「なぁ、紗羅・・・。俺、頑張るから・・・。二人の夢が実現するために、全力で支える」


藤宮:「嬉しい・・・。私ね・・・、奏太を好きになって良かった・・・」


神谷:「え?」


藤宮:「だって・・・、こんなにも、幸せになれたから・・・。・・・大好きだよ、奏太・・・」


神谷:「俺も大好きだよ、紗羅・・・」 (頬にキスをする)


藤宮:「奏太・・・」


神谷:「あ・・・、ごめん・・・。電話だ・・・。ちょっと電話してくる・・・。少し待ってて」


藤宮:「うん・・・」

 


 


藤宮:(N)「少し待った後・・・、奏太は戻って来た・・・。
         それから、家までの帰り道・・・。
         私と奏太は・・・、街の中のイルミネーションや、雰囲気を歩きながら楽しんだ・・・。
         家に着くまでの間・・・、ずっと奏太は、手を繋いでくれて、私は幸せな時間を過ごした・・・」

 

神谷:「・・・家に着いたな・・・」


藤宮:「うん・・・」


神谷:「・・・」


藤宮:「・・・。ねぇ・・・奏太、・・・少し家に寄ってく・・・?」


神谷:「そうしたい所だけど・・・、今日は止めとく・・・。
    ほらっ・・・、無理をさせて、また発作が出たら大変だからな・・・」


藤宮:「そうだよね・・・。我儘言ってごめんね・・・」


神谷:「我儘な物か・・・。俺のほうこそ、ごめん・・・」


藤宮:「ううん・・・。じゃあ、部屋に入るね・・・」


神谷:「待って・・・!」


藤宮:「え?」


神谷:「・・・いや、その・・・。・・・やっぱり、紗羅が眠るまで、側に居ようかな・・・」


藤宮:「良いの・・・?」


神谷:「うん・・・」


藤宮:「嬉しい・・・。・・・じゃあ、中に入ろう・・・」


神谷:「そうだな」

 


 


(奏太は紗羅を抱きかかえるようにして部屋まで運んだ)

(ベッドの上に優しく横たえると、紗羅はようやく少しだけ呼吸が安定し、
 まぶたを重く閉じている)

 

藤宮:「奏太・・・。ベッドまで運んでくれて・・・、ありがとう・・・。
    ごめんね・・・」


神谷:「謝る必要なんてない。・・・俺のことは気にせず、寝て良いからな」


藤宮:「うん・・・。さっきね・・・、奏太とイルミネーションが見れて、嬉しかった~・・・」


神谷:「綺麗だったな~。・・・あっ、そうだ・・・。紗羅・・・、手を出して・・・」


藤宮:「うん・・・」


神谷:「はい・・・、クリスマスプレゼント・・・」


藤宮:「え? いつ、用意してたの・・・?」


神谷:「あ~・・・、実は・・・、さっき予約した店に取りに行ってた・・・」


藤宮:「それで少し遅かったんだ・・・」


神谷:「うん・・・。開けてみて・・・」


(袋を開ける紗羅)

 


藤宮:「・・・。
    うわああああ・・・。・・・綺麗・・・。これって・・・」

 

神谷:「・・・雪の結晶のネックレス・・・。気に入った・・・?」


藤宮:「うん・・・。水色と銀色のコントラストが凄く綺麗・・・!」


神谷:「良かった~・・・。紗羅が喜んでくれたなら、頑張ったかいがあるよ」


藤宮:「え? 奏太の手作り・・・?」

 


神谷:「あ・・・、まぁ・・・、一応・・・。
    店の店主に手伝って貰ったりもあったけど・・・、デザインは俺が考えた・・・。
    ほらっ・・・、紗羅・・・、雪が好きだろ?」

 


藤宮:「覚えてくれてたんだ・・・」


神谷:「当たり前だろう・・・」

 

 


(高校 美術部、部室)

 


藤宮:「ううう・・・、寒くなって来たね~」


桐生:「そうね~。・・・ねぇ、紗羅。・・・部活が終わったら、何か食べに行く?」


藤宮:「うん、行く~。・・・あ、商店街の鯛焼きも捨てがたいな~。あ~でも~、たこ焼きも食べたい~」


桐生:「うふふふ・・・。欲張りね~。・・・まぁ、でも、私も食べたいから~、
    この際、両方、食べに行きましょうか?」


藤宮:「悠真! 大好き~~~!」


桐生:「もう~! いきなり抱きつかないでよ~。・・・本当、可愛いわね~」


神谷:「ちーっす」


藤宮:「奏太・・・! ・・・ねぇ、奏太も一緒に行く?」


神谷:「何の話だ・・・?」


桐生:「部活が終わったら、商店街に行って、何か食べようかな~って話してたのよ」


神谷:「要するに買い食いだな・・・」


藤宮:「奏太も行こうよ~~~」


神谷:「どうしようかな~・・・」


桐生:「あら? 何、渋ってんのよ~。
    もしかして、俺は、優等生とでも言うつもり~?」


神谷:「いや、そうは言わないけど・・・、画材、買ったりしたから、お金がな~・・・」


桐生:「何よ、それで悩んでたの~。あんた、可愛いところあるわね~」


神谷:「可愛いは余計だろ」


桐生:「うふふふふ・・・。仕方ないわね~。この私に、任せておきなさい!」


神谷:「ん?」


桐生:「二人の分まで、この私が出してあげる! どーんと、頼りなさ~い!!」


神谷:「良いのか?」


桐生:「良いのよ~。・・・その代わり、あんたには、熱々のたこ焼きを頬張って貰うから、そのつもりでね~」


神谷:「うわ、悪魔かよ~・・・」


藤宮:「ふふふふふ・・・」

 

 


(部活の終わった三人は、商店街に来てる)

 

藤宮:「わぁ、今日も行列できてるね~・・・」


桐生:「そりゃそうよ〜、此処のたこ焼き、外カリ、中トロの最強なんだから~。
    ほら奏太~、ぼーっとしてないで早く並ぶわよ~!!」


神谷:「いや、悠真が一番はしゃいでるし」

 


 


桐生:「ふ~、何とか、人数分、買えたわね~」


神谷:「うおっ・・・熱っ、これ絶対やばいって・・・!」


藤宮:「奏太・・・、頑張って・・・!」


神谷:「よし・・・、いただきま~す・・・。
    あっっっっつ!! あっっつつつ!!
    はふっ! はふはふっ!!」


桐生:「あんたね~、男ならそのくらいガツッといきなさいよ!
    何よ、このくらい。・・・ほら、あたしなんて・・・あちッ!!」

 

神谷:「お前も駄目じゃないか!!」


藤宮:「あっはははは・・・」


桐生:「うふふふふふ・・・」


神谷:「あっははははは」  (三人で笑い合う)

 


 


藤宮:「ほら、ふーっ、ふーっ・・・はい。
    奏太、あーんして? もう熱くないよ~?」


神谷:「え? ・・・あ~ん・・・。・・・うまっ!!」


藤宮:「もう一個、食べる?」


神谷:「うん・・・!」


桐生:「あらあら、お熱いこと~」


神谷:「何だよ~、何か言いたいのか~?」


桐生:「別に~」


藤宮:「二人共ったら・・・。・・・あっ! ねぇ・・・、見て! 雪、降って来た~・・・!!」


神谷:「本当だ~」


桐生:「綺麗ね~」


藤宮:「私・・・、雪・・・、大好きなんだ~・・・」


神谷:「そうなんだ~。綺麗だよな~」


藤宮:「・・・奏太も、雪・・・、好き・・・?」


神谷:「あぁ・・・、好きだよ」


藤宮:「そっか・・・。嬉しい・・・」


桐生:「何だ~・・・、そういうこと~・・・。それなら・・・。(小声)
    ねぇ、紗羅・・・。今度は向こうの鯛焼き、買いに行きましょう~」


藤宮:「良いね~。うん、行こう」


神谷:「じゃあ、俺も」


桐生:「あんたは、此処で待ってなさい」


神谷:「え? どうしてだよ~」


桐生:「良いから、大人しく此処の席、取って置いて」


神谷:「はぁ~・・・、仕方ない・・・」


桐生:「宜しくね~。じゃあ、紗羅、行きましょう~」


藤宮:「うん・・・」

 


 


桐生:「あら~・・・、鯛焼き屋も混んでるわね~」


藤宮:「ねぇ~、悠真・・・。どうして、奏太は留守番させたの・・・?」


桐生:「それはね~、紗羅の本心を聞きたくなったからよ~。
    ねぇ・・・、正直に答えて・・・。
    奏太のこと・・・、好き?」

 


藤宮:「うん・・・、好き・・・」


桐生:「そう・・・。それが本心なのね・・・。分かった・・・」


藤宮:「悠真・・・?」


桐生:「仕方ない・・・。二人の恋・・・、応援してあげる」


藤宮:「本当に・・・?」


桐生:「ええ。・・・私、この後、そっと用事が出来たと言って抜け出すから・・・、後は頑張りなさよ!」


藤宮:「うん、私、頑張るね・・・!!」

 

 


(紗羅のマンション)

 

神谷:「悠真は・・・、あの頃から、お節介焼きだったんだな・・・」 (小声)


藤宮:「そこが、悠真の良い所だもん・・・」(小声)


神谷:「え・・・?」


藤宮:「ううん・・・。何でもない。・・・奏太・・・、このネックレス・・・、大事にするね・・・」


神谷:「おう・・・」


藤宮:「ゴホッゴホッ・・・」


神谷:「ほらっ・・・、今夜は冷えるんだから、これ以上、無理するな・・・」


藤宮:「うん・・・。・・・ねぇ、奏太・・・」


神谷:「何だ・・・?」


藤宮:「私ね・・・。・・・生まれ変わったら、雪になりたい・・・。
    綺麗だね・・・と、誰かの心を温かくしてあげたいの・・・」


神谷:「雪か・・・。それじゃあ俺は、雪を照らす太陽になる・・・」


藤宮:「え?」


神谷:「太陽に生まれ変わったら、紗羅をそっと見守れるだろう・・・?」


藤宮:「奏太・・・。雪なんだから・・・、私・・・、溶けちゃうよ・・・」


神谷:「それは、不味いな・・・」


藤宮:「もう・・・、ふふふふ・・・」


神谷:「あっはははは・・・」


藤宮:「メリークリスマス・・・、奏太・・・」


神谷:「メリークリスマス・・・、紗羅・・・」(紗羅にキス)

 

藤宮:(N):「翌日、奏太と悠真の三人で、クリスマスパーティーと、悠真の帰国祝いをした。
          私は・・・、奏太も、悠真も、どちらも大事・・・。
          もし神様が居て・・・、私達を見守ってくれているなら・・・、
          どうか・・・、私達3人の幸せを、これからも続けさせてください・・・。
        私は・・・、そっと、そう・・・、願った・・・」

 


桐生:「・・・ねぇ、奏太・・・」


神谷:「ん?」


桐生:「あんた・・・、ちゃんとクリスマスプレゼント、渡したんでしょうね?」


神谷:「渡したよ」


桐生:「そう・・・、それなら良いけど・・・。・・・それで、あんたは、紗羅から何を貰ったのよ・・・?」


神谷:「内緒だ」


桐生:「どうしてよ~」


神谷:「どうしてもだ・・・」

 


 


(前日)


神谷:「気に入ってくれて、嬉しいよ」


藤宮:「・・・奏太、私もね・・・、クリスマスプレゼント、用意してたんだけど・・・」


神谷:「どうした?」


藤宮:「・・・今年は、完成、間に合わなかったんだ・・・。だから・・・、来年まで待っててくれる・・・?」


神谷:「それって・・・」


藤宮:「うん・・・。奏太の為に書いた手作りのプレゼント・・・」


神谷:「俺だけの紗羅のイラスト・・・。嬉しいよ・・・。
    ・・・分かった。・・・来年まで待ってる」


藤宮:「ありがとう、奏太・・・」

 

桐生:「ねぇ、良いから教えなさいよ~、ねぇ、ちょっと聞こえてる~? 奏太!」


神谷:「ん? 何か言ったか?」


桐生:「もう、一人で何を考えてたのよ~」


神谷:「昨日の紗羅とのやり取りを思い出してた・・・」


桐生:「まぁ、お熱いこと~・・・」


神谷:「来年が楽しみだ・・・」

 


藤宮:(N)「私の願いが神様に届いたのだろうか、
         それからの一年は、持病の発作も、そこまで起こらずに、幸せな日々が続いた・・・」

 


神谷:「はぁ~・・・。(息を吐く)
    ・・・今年も、もう12月になったか~・・・」

 

桐生:「一年、あっと言う間よね~。ねぇ、こんなに寒いと、あの時、思い出さない・・・?」

 

藤宮:「校舎裏の告白騒動・・・?」


神谷:「うげ・・・。勘弁してくれよ・・・。あの頃は、苦労したんだからさ・・・」

 

 


(高校時代)

桐生:「はぁ~・・・。(息を吐く)
    もう・・・、寒くて仕方ないわよ~。どうして・・・、あたしが、こんな寒い日に、こんな場所で、
    あいつが告白されるところなんか、見なきゃいけないのよ~・・・」


藤宮:「しっ!!! 悠真・・・、静かにして・・・!!」


桐生:「心配なのは、分かるけど・・・、いつまでも此処に居たら、風邪を引いちゃうじゃないの~」


藤宮:「はいはい、文句はそこまで。・・・奏太、来たよ・・・」


桐生:「どれどれ~。・・・まぁ、何よ、紗羅が見てるとも知らずに・・・、
    あの腑抜けた顔・・・」


藤宮:「え? 私には、緊張してる顏にしか見えないけど・・・。
    あ・・・」


神谷:「痛っ!!!」 


桐生:「今の見た? 相手の女に、思いっきり引っぱたかれてたわよ~」


藤宮:「痛そうだったね・・・。ふぅ~・・・、良かった~・・・」


桐生:「ふふふ・・・。これで、少しは心配も解消されたわよね・・・」


神谷:「こんな所で、何をしてるんだ・・・」


桐生:「ぎゃああああああああああ!!!! 出たああああああああ!!!!」


神谷:「化け物に遭遇したかのように驚くな!!!」


藤宮:「・・・あの、奏太・・・。・・・その・・・」


神谷:「さては・・・、さっきの一部始終、覗いてやがったな~?」


藤宮:「ごめんなさい・・・! ・・・でも、心配だったの・・・。
    奏太が・・・、誰かと付き合うかもしれないって思ったら・・・、居ても立っても居られなくなっちゃって・・・」


神谷:「え!? ・・・それって・・・」


桐生:「あんたも鈍いわね~・・・。・・・紗羅はね、あんたの事・・・」


藤宮:「それ以上、言ったら駄目・・・!! 悠真・・・。・・・お願い、・・・ちゃんと自分の口から伝えたいの・・・」


桐生:「紗羅・・・。・・・そう・・・、分かった」


藤宮:「ありがとうね・・・、悠真・・・」


神谷:「・・・」


藤宮:「・・・奏太。・・・私は・・・、奏太の事が好き・・・。
    ・・・この気持ちは・・・、誰にも負けたくない・・・。
    誰にも・・・、奏太を奪われたくない・・・。
    こんな欲張りな私でも・・・、・・・付き合ってくれますか・・・?」


神谷:「あぁ、・・・勿論だ。
    俺も・・・、そんな欲張りな紗羅が、好きだから・・・。
    あんな見っともない所を見られても、平気なんだ・・・。
    ・・・だから、もう、何も心配しなくて良い。・・・安心しろ・・・」

 

藤宮:「うん・・・!!」

 

 


桐生:「あ~、もう~・・・。思い出しただけで、何だか熱くなってきちゃうわね~・・・。
    私・・・、ちょっと、外に出てくる・・・」

 

神谷:「・・・」


藤宮:「・・・」

 

神谷:「今年のクリスマスは・・・、三人でお祝いしよう・・・」


藤宮:「うん・・・。悠真も、喜ぶよね・・・」


神谷:「あぁ、きっと喜ぶさ・・・。・・・紗羅」 (キスしようとする)


藤宮:「奏太・・・」


桐生:「ただいま~! もう・・・、何よ、その雰囲気は~?」


神谷:「何でもない・・・。それよりも、何処に行ってたんだ~」


桐生:「ふふふ・・・。これを買いに行ってたのよ~。じゃ~ん!!」


藤宮:「うわ~・・・。鯛焼きだ~・・・」


桐生:「冬といえば、やはり、これよね~」


神谷:「お、気が利くじゃないか~。どれどれ~・・・。熱ちちちちちちち・・・!!!」


桐生:「出来立てだから、熱いに決まってるじゃ無いの・・・」


神谷:「それを先に言えよな・・・。ふぅ~、ふぅ~・・・」


藤宮:「もう、奏太ったら・・・。ふふふふ・・・」

 


 


藤宮:(N)「皆で、こうして笑いながら、何かを食べるのは・・・、
         本当に、幸せな時間でした・・・。
        12月もあっと言う間に過ぎていき・・・、
         再び・・・、クリスマスイヴがやって来ました・・・」

 


 


神谷:「紗羅・・・。少し働き過ぎじゃないか・・・?」


藤宮:「平気・・・。・・・ギャラリーに来るお客様も、この一年で少しずつ増えて来たんだから、
    今が、頑張るときなの・・・。・・・あ、いらっしゃいませ~!
    どうぞ・・・、御覧になって行ってください・・・」


神谷:「・・・」


桐生:「ふふふ・・・、そんな顔してたら、お客様が逃げちゃうわよ~」


神谷:「悠真・・・、お前は、紗羅が心配じゃないのか・・・?」


桐生:「・・・心配は心配よ・・・。でも、見て・・・。紗羅、あんなに生き生きしてる・・・。」


神谷:「楽しそうだな・・・」


桐生:「楽しいに決まってるじゃない。・・・自分の夢が、少しずつ実現してるんだから・・・。
    所で、奏太・・・」


神谷:「何だよ・・・?」


桐生:「今日は、クリスマスイヴよ・・・。その左ポケットに隠してる指輪・・・。
    ちゃんと、紗羅に渡せると良いわね・・・」


神谷:「お前・・・、気付いてたのか?」


桐生:「当然じゃない。・・・紗羅を見つめては、左ポケットに手を突っ込んでばかり・・・。
    ・・・幾らなんでも、バレバレよ・・・」


神谷:「紗羅は・・・、受け取ってくれるだろうか・・・」


桐生:「何を弱気になってるのよ!! 当たって砕けてきなさい!!」 (背中を押す)


神谷:「おいっ!! 何するんだ!!」


桐生:「・・・うるさい。良い、よく聞きなさい。・・・必ず紗羅を幸せにしてあげて・・・」


神谷:「あぁ・・・、約束する・・・」


桐生:「約束よ・・・。さ~てと・・・」


神谷:「ん?」


桐生:「紗羅~!! 奏太が大事な用事があるみたいよ~!! ちょっと来てくれる~!?」


藤宮:「え? うん、分かった・・・!」


神谷:「悠真・・・、お前・・・」


桐生:「しっかり決めなさい・・・。じゃあね・・・」


神谷:「・・・」


藤宮:「あれ? 悠真は・・・?」


神谷:「紗羅・・・、大事な話があるんだ・・・」


藤宮:「え? ちょっと・・・、奏太・・・、膝まづいて・・・、どうしたの・・・?」


神谷:「・・・紗羅。・・・受け取ってくれないか・・・?」


藤宮:「え? これって・・・」


神谷:「・・・結婚しよう、紗羅。これから先・・・、俺がお前を支える・・・」


藤宮:「奏太・・・」


神谷:「ん?」


藤宮:「本当に後悔しない・・・?」


神谷:「後悔するわけないだろう・・・」


藤宮:「・・・私、こんなに幸せで大丈夫なのかな・・・」


神谷:「え?」


藤宮:「はい・・・。・・・幸せにしてね・・・。奏太・・・」


神谷:「あぁ・・・、勿論だ・・・」

 


 


藤宮:(N)「気付くと、私達は、悠真と、ギャラリーに訪れたお客様に、
       沢山のおめでとうと、拍手を貰っていた・・・。
       高校の頃から、ずっと私を支えてくれた大事な人・・・。
       私は・・・、奏太と、この先も・・・、ずっと一緒に過ごしたい・・・。
       そう・・・、願った・・・」

 

桐生:「紗羅・・・、奏太・・・、おめでとう・・・。
    さ~て、これから益々、忙しくなるわよ~。結婚式の準備とか~。
    何なら、私、神父も引き受けちゃう!」

 


神谷:「あっはははは。その時は、頼むのも良いかもな~」


藤宮:「うん・・・! あ・・・、お客様だ・・・。
    ねぇ、奏太・・・」


神谷:「どうした?」


藤宮:「お客様の対応があるから・・・、先に帰って大丈夫だよ・・・」


神谷:「一人で平気か・・・?」


藤宮:「うん・・・。仕事が終わったら・・・、後で、3人で、お祝いしたいから、準備お願い出来る・・・?」


神谷:「分かった。・・・悠真と準備しとくよ」


桐生:「え? どうしたの?」


神谷:「さぁ、俺達は、この後のクリスマスパーティーの準備だ。
    買い出しした後、俺の家に行くぞ」


桐生:「仕方ないわね~。付き合ってあげる。・・・じゃあ、紗羅。また後でね~」


藤宮:「うん。準備宜しくね~。・・・さてと・・・、もう少し頑張らなきゃ・・・。
    あ、いらっしゃいませ~」

 

 


藤宮:「・・・ありがとうございました。またのお越しをお待ちしてます。
    ふ~・・・、もう、こんな時間・・・。
    急いで、帰る準備しないと・・・。
    ・・・ん?   (電話がかかってくる)
    はい、もしもし・・・、はい・・・、・・・え? 私の個展ですか?
    ・・・ありがとうございます・・・。
    え? ・・・打ち合わせですか・・・? 明後日なら・・・大丈夫です・・・。
    はい・・・、はい・・・、宜しくお願いします・・・!!」

 


藤宮:「はい、失礼します・・・! 明後日の打合せ、宜しくお願いします!!
    嘘・・・、夢みたい・・・。・・・ようやく夢だったギャラリーの個展が開ける・・・。
    此処まで、長かったな~・・・!
    ふふふ・・・、奏太も、悠真も、この後・・・、この事知ったら、驚くだろうな~!
    あ、そうだ!! この際、今から電話で驚かすのも! うっ!!
    ゴホッゴホッ・・・。嘘・・・!? こんなときに発作が・・・。
    ・・・ゴホッゴホッ!! ・・・最近、体の調子も良いから、油断してた・・・。
    早く・・・、薬を・・・、飲まないと・・・。・・・あっ・・・!! (倒れる)
    ・・・ゴホッゴホッ。痛っ・・・!! 足・・・、挫いちゃった・・・。
    でも・・・、このままじゃ・・・、駄目・・・。這ってでも・・・薬・・・、取りに行かなきゃ・・・!!
    ゴホッゴホッ!! ・・・嫌だよ・・・! 折角・・・、此処まで、夢に辿り着いたのに・・・!
    諦めたくない・・・!! ゴホッゴホッ!! ゴホッゴホッ!! ・・・奏太・・・」

 


神谷:「・・・よし、パーティーの準備は、こんな物か・・・。それにしても、紗羅・・・、遅いな~・・・」


桐生:「そうね~・・・。もうすぐ・・・、日付、変わっちゃう・・・」


神谷:「紗羅・・・。
    ・・・ん? 電話だ・・・」


桐生:「紗羅から?」


神谷:「いいや、知らない番号だ・・・。
    もしもし・・・。・・・え・・・? ・・・はい・・・。・・・分かりました・・・。
    ・・・連絡・・・、ありがとうござました・・・。・・・はい、失礼します・・・。
    ・・・嘘だろう・・・」  

 

桐生:「何? どうしたのよ?」


神谷:「・・・警察からの連絡だった・・・」


桐生:「え? どうして警察が・・・?」


神谷:「・・・紗羅が・・・、ギャラリーで・・・、亡くなったと・・・」


桐生:「嘘・・・」


神谷:「紗羅・・・。うっ・・・」


桐生:「奏太・・・! しっかりしなさい! 奏太・・・!!」

 


 


神谷:(N)「俺の大事な紗羅が、この世を去った・・・。
        それからの数か月は・・・、何もかもが色褪せて見えて、どうでもよくなっていた・・・」

 

(奏太の家を訪ねる悠真)

 


神谷:「・・・紗羅。・・・どうして、俺を置いて行ったんだ・・・。・・・紗羅・・・」

 


(部屋のチャイムを鳴らす)

 


桐生:「・・・ねぇ、奏太・・・。そこに居るんでしょう・・・。お願い、開けて頂戴・・・」


神谷:「紗羅・・・。あんなに冷たい床で、一人、寂しく・・・、俺達を呼び続けていたんだよな・・・。
    ・・・俺が、ギャラリーに残って居れば・・・、お前は・・・、死ななかったんだ・・・。
    ・・・許してくれ・・・。・・・紗羅・・・」


桐生:「いつまで、塞ぎ込んでるつもり・・・。あんたの気持ちも分かる・・・。
    でも・・・、紗羅の葬式にも来ないで・・・、こうやって自分の殻に閉じこもっていても、
    あんたも・・・、辛いだけよ・・・」


神谷:「お前に何が分かる・・・。俺がもっと気を付けていたら・・・、紗羅を守る事が出来たんだ・・・!
    ・・・なぁ、そうだよな・・・。紗羅・・・?」


藤宮:「奏太・・・」


桐生:「あんたに見えてる紗羅は、あんたが都合良く作り出した幻に過ぎないの!!」


神谷:「違う!!! 紗羅は、目の前に居る・・・!! なぁ、紗羅・・・?」


藤宮:「奏太・・・」


桐生:「好い加減になさい!! そんな腑抜けた姿、紗羅は望んで無いわよ!!」


神谷:「悠真・・・。・・・。・・・お願いだ、放っておいてくれ・・・。
    もう・・・、これ以上・・・、俺を苦しめないでくれよ・・・」


桐生:「そう・・・。分かった・・・。
    あんたが、その気なら、私にも考えがある・・・。
    良いこと? よくお聞きなさい。・・・紗羅のギャラリーだけど・・・、引き払うことが決定したわ・・・」


神谷:「何だと・・・? おい・・・、冗談だよな・・・?」


桐生:「いいえ、本気よ。・・・紗羅の両親とも相談して、決まったのよ。
    今、展示されてる絵は・・・、全部、売るのも決まったから・・・」


神谷:「え? 紗羅の思い出が・・・、全部・・・、無くなる・・・?」


桐生:「要件は伝えたわよ・・・。私は、ギャラリーに戻るわ・・・」


神谷:「・・・紗羅。・・・俺は、どうしたら・・・」

 

 


(高校の頃)

 


藤宮:「悠真・・・、私ね・・・、大人になったら、イラストレーターになって、自分のギャラリーを開くのが目標なんだ・・・」


桐生:「良い目標じゃない・・・。・・・紗羅は、こんなに絵を描くのが上手いから、上手く行くわよ」


藤宮:「ありがとうね、悠真・・・。私、頑張る・・・!」

 


 


桐生:「紗羅・・・。・・・貴方・・・、立派だったわよ・・・。

    ・・・あらっ、この額縁だけ、カーテンがかかってる・・・。え・・・、この絵は・・・」


神谷:「はぁ、はぁ、はぁ、・・・悠真! ・・・紗羅の大事な絵は誰にも渡さない!!」


桐生:「何よ、今更・・・。そう思ってたのなら、もっと早くに動きなさいよ・・・」


神谷:「お前に、俺の苦しみが分かって堪るか・・・。・・・結婚のプロポーズをした当日に・・・、
    俺の大事な紗羅は、此処で、一人、寂しく死んだんだ!!!
    俺が・・・、あの時・・・、一緒に残って居たら!!!」


桐生:「独りよがりも好い加減にしなさいよ!! あの時、紗羅が一人で残りたかった理由も、考えなさいよ!!
    紗羅はね・・・、このプレゼントを、最後の最後まで、仕上げていたのよ!!」 (額縁に掛かってるカーテンを引く)

 

神谷:「これは・・・、俺の自画像・・・!? ・・・紗羅・・・」

 

藤宮:「ごめんね・・・、奏太・・・」


神谷:「紗羅!? 紗羅の声が聞こえる!?」


桐生:「あの子ったら・・・、カーテンを引いた後に、こんな仕掛けまで・・・。奏太・・・、そっちの壁を見て見なさい・・・」


神谷:「紗羅・・・」

 


(向かいの壁には、映写機の映像が流れている)

 


藤宮:「う~ん・・・、上手く撮れてるかな・・・?
    ・・・奏太・・・。・・・クリスマスプレゼント・・・、遅くなってごめんね・・・。
    ・・・本当は、去年、渡したかったんだけど・・・、体調が良くなくて渡せなかった・・・。
    でも・・・、今年はね・・・、怖いくらい体調も良いから・・・、私、頑張ったんだよ・・・。
    奏太の事を思って、大事に一つ一つ描いたの・・・。
    この一年間・・・、奏太と一緒に、色々な所に行ったよね~・・・。
    一緒に観に行った海も綺麗だった・・・。
    ・・・私ね・・・、この一年間、幸せだったけど・・・、何だか怖くなったの・・・。
    だから・・・、こんな録画を、イヴの前日に残そうと思ったんだ・・・。
    あ・・・、でも・・・、こんな心配事ばかり観たら・・・、奏太に怒られちゃうかな・・・?
    ・・・奏太・・・。・・・メリークリスマス・・・」

 

神谷:「・・・メリークリスマス・・・、紗羅・・・。
    ・・・こんな物まで・・・、俺の為に用意してくれてたんだな・・・」


桐生:「・・・ねぇ、奏太・・・」


神谷:「何だ・・・?」


桐生:「紗羅の絵を全部売るのは、私の考えた嘘よ・・・」


神谷:「そうだったのか・・・。どうして、そんな嘘を付いたんだ・・・」


桐生:「そうでもしなきゃ、あんたは・・・、自分の殻から出てこないと思ったのよ・・・」


神谷:「悠真・・・」


桐生:「この紗羅のギャラリーは、どうするかは、これから考えましょう・・・」


神谷:「その事だけど・・・、もう決めた・・・」


桐生:「え?」


神谷:「此処は、俺が運営し続ける・・・。
    紗羅の絵を、一人でも、多くの人に見て欲しいんだ・・・」


桐生:「そう・・・。じゃあ、私も手伝う・・・」


神谷:「え?」


桐生:「何よ、嫌とは言わせないわよ」


神谷:「わかった、宜しく頼む」


桐生:「ええ・・・。
    ・・・あ・・・、外を見て。・・・雪よ・・・、綺麗・・・」


神谷:「あぁ、綺麗だな・・・」

 


(回想)

 


藤宮:「私ね・・・。・・・生まれ変わったら、雪になりたい・・・。
    綺麗だね・・・って、誰かの心を温かくしてあげたいの・・・」

 


(回想、終わり)

 

 


神谷:(M):「なぁ・・・、紗羅・・・。天国から見えているか?
        お前の願いは・・・、ちゃんと・・・、届いたよ・・・」

 

 

 

 

 


終わり

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