
二二〇
作者:片摩 廣
登場人物
御堂 修一(みどう しゅういち)・・・深夜2時の番組を担当するラジオDJ
月白 麻衣(つきしろ まい)・・・病院勤務。御堂の担当するラジオに、二二〇(ふたふたまる)の、
ラジオネームで、投稿している女性
比率:【1:1】
上演時間:【30分】
オンリーONEシナリオ2526
1月、椿をテーマにしたシナリオ
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CAST
御堂 修一:
月白 麻衣:
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(深夜2時)
(病院の休憩室)
(自販機の低い唸り音と、蛍光灯の灯り)
(月白麻衣は紙コップのコーヒーを両手で包み、ラジオをつける)
月白:「ふぅ・・・、間に合った・・・」
御堂:「こんばんは。御堂 修一です。
この時間に起きている貴方は、きっと今日を、まだ終わらせたくない人でしょうか・・・」
月白:(N)「病院の夜勤は憂鬱だ・・・。
いつナースコールが鳴って、患者から呼ばれるか分からない緊張の連続に、
私は・・・、疲弊していた。
そんなある日、偶然、流れたラジオ・・・。
私は、この御堂 修一のラジオが、深夜の楽しみになっていた・・・」
御堂:「今夜も、無理に元気でいる必要はありません。
このラジオを聞いてる30分間だけは、どうか、現実を忘れて、楽しんでください」
月白:(N)「彼の声が、私の疲れた体を、そっと包んでくれるのが、心地良かった・・・」
御堂:「さて、早速、お便りが届いてるので、読ませていただきます。
ラジオネーム・・・、夜更かしスプーンさんからのお便りです。
御堂さん、こんばんは・・・。私は、眠れない日々が続いてます。
そんな時は、御堂さんの声を聞くと、疲れが吹っ飛んじゃいます」
月白:「夜更かしスプーンさん・・・、その気持ち、分かる・・・」
御堂:「いつも、素敵な声と癒しをありがとうございます・・・。
・・・夜更かしスプーンさん、こちらこそ、いつも番組を聞いてくれて、ありがとうございます。
そうですね・・・、眠ろうとすると、逆に寝れなくて辛いことがありますよね。
そんな時に私のお勧めは、椿のアロマオイルです。
試してみてください・・・。
それでは、お聞きください。夜更かしスプーンさんからのリクエストで・・・」
月白:「・・・同僚から貰ったアロマストーン、まだ未使用のままだ・・・。
椿のアロマオイルか~。買ってみようかな・・・」
御堂:「お送りしたのは、夜更かしスプーンさんのリクエストでした」
月白:「今日こそ・・・、お便り、送らなきゃ・・・。
でも・・・、ペンネーム、どうしよう・・・。・・・そうだ・・・」
間
御堂:「続きまして・・・、おや? 初めての方ですね。
ラジオネーム・・・、二二〇(ふたふたまる)さんからのお便りです。
御堂さん、こんばんは。・・・はい、こんばんは・・・」
月白:「御堂さんが、挨拶を返してくれた・・・。嬉しい・・・」
御堂:「いつも、御堂さんのラジオ番組を楽しみにしています。
私は、夜勤の仕事をしています。
・・・いつも緊張感の中に居て・・・、精神的に辛いことばかりです・・・。
そんな中、御堂さんのラジオ番組を知って、御堂さんの声に癒されてます。
御堂さんにお願いがあります。・・・励まして貰えますか?
これからも、応援しています・・・」
月白:「私の、初めてのお便り・・・、読んでくれた・・・。
どうしよう・・・、御堂さん・・・、何て返してくれるかな・・・」
御堂:「二二〇さん・・・。初めての便り、どうも、ありがとう・・・。
夜勤の仕事をしてるんですね・・・。
聞いての通り、私も、深夜に、こうして声を届けるお仕事をしています。
励ましの言葉ですか・・・。
そうですね・・・。二二〇さんが、どんな職業なのかは、知りません。
でも、貴方の頑張りは、周りの同僚にも伝わってるはず。
辛い時は、素直に頼ってみては、どうでしょう?
私も、二二〇さんを応援しています」
月白:「御堂さんが、応援してくれる・・・。
そうだ・・・、何でも自分でやろうとするから、疲れるんだ・・・。
もっと、同僚に頼ろう・・・」
御堂:「二二〇さんのリクエスト曲に移りたいのですが・・・、どうやら、書くのを忘れたみたいですね・・・」
月白:「しまった・・・。・・・御堂さんに思いを伝える事しか考えてなかった・・・」
御堂:「それでは、そんな二二〇さんに、私のお勧めの曲を贈りましょう。
この曲が、夜勤の疲れを癒せると良いですね・・・。お聞きください・・・」
(御堂のお勧めの曲が流れる)
月白:「この曲・・・。・・・何だか、聞き覚えがある・・・。何処で、聞いたんだろう・・・。
そうだ・・・。・・・あの時、街で流れていた曲だ・・・」
月白:(N)「私は・・・、数か月前の出来事を思い出した・・・。
そう・・・、生涯、忘れることが出来ない夜・・・」
間
(電車の線路が見える橋)
(電車が走り抜ける音)
(月白は、欄干に手を置いている。白い息が、夜に溶けていく)
月白:「私・・・、どうしたんだろう・・・。
いつも見慣れてる此処からの景色も・・・、下を通る電車も・・・、今日は何だか・・・、違って見える・・・。
東京に上京して・・・、必死に頑張ってるのに・・・、誰も、私の努力を評価してくれない・・・。
・・・私・・・、何のために、生きてるのかな・・・」
御堂:「送ってくれてすまない。此処からは、歩いて帰るよ。
大丈夫だ・・・。少し、夜風に、吹かれて帰りたいんだ・・・。
それじゃあ、また来週・・・。
ふぅ・・・。・・・ん? こんな夜中に・・・、橋の上に、誰か居る・・・」
月白:「高いな~・・・。
此処から、飛び降りたら・・・、何もかも、楽になるよね・・・。(橋の欄干に登る)
っ・・・、ごめんね・・・、父さん・・・、母さん・・・」
御堂:「おい、君! そんな所に登って何をしている」
月白:「私に・・・、近寄らないでください・・・。お願いだから、放っておいて・・・」
御堂:「放っておけるわけ無いだろう。・・・さぁ・・・、危ないから降りるんだ・・・」
月白:「それ以上、こっちに来ないでください・・・!」
御堂:「分かったから、少し落ち着いて・・・。
・・・ほらっ、君の言う通り・・・、此処から動いてない・・・」
月白:「・・・」
御堂:「な・・・?」
月白:「お願いです・・・。もう、行ってください・・・」
御堂:「分かった。・・・だから、君も、そんな危険な事は止めるんだ・・・」
月白:「誰も・・・、私を認めてくれないんです・・・。
・・・私が生きてる意味なんて・・・、もう・・・、無いの・・・!」
御堂:「だったら、俺が君の生きてる意味になる!」
月白:「え? それは、どういう・・・。きゃっ・・・!!」 (バランスを崩して橋の下に落ちそうになる)
御堂:「危ないっ!!!」
間
御堂:「はぁ、はぁ、はぁ・・・。君、大丈夫・・・?」 (荒い息)
月白:「はい・・・。お陰様で・・・」
御堂:「・・・良いかい? もう、こんな危険な真似は止すんだ・・・!! 分かったね?」
月白:「分かりました・・・」
御堂:「・・・無事で良かった・・・」
月白:(N)「そう言うと、彼は、より一層、強く抱きしめてくれた・・・。
彼の声と心臓の鼓動が・・・、心地良かった・・・」
間
御堂:「お送りしたのは、私からのリクエストでした。
この曲は、二二〇さんの心に届いたでしょうか・・・。
届いたのなら・・・、私も嬉しいです・・・」
月白:「似ている・・・。あの時、私を助けた彼の声に・・・」
御堂:「さて、そろそろお別れの時間が近付いたようです。
今週も、この番組を聞いていただき、ありがとうございました。
お相手は、この私・・・、御堂 修一が、お送り致しました・・・」
月白:(N)「彼の声の余韻に浸りながら・・・、冷めた自販機の珈琲を飲んだ・・・」
月白:(N)「・・・それからの私は・・・、
御堂さんの番組に・・・、毎週お便りを送るのが楽しみになっていた・・・」
御堂:「こんばんは。御堂 修一です。
最近、一段と寒さが厳しくなりましたね。
このラジオを聞いてる皆さんは、いかが、お過ごしでしょうか?」
月白:「・・・椿のアロマオイル。・・・良い匂いだな・・・。
御堂さん・・・、今日は仕事の休みでした。
・・・私、アドバイス通り、同僚に弱音を吐いたんです。
そうしたら・・・、私の気持ち、ちゃんと同僚に伝わりました・・・。
・・・私ったら、馬鹿ね・・・。・・・御堂さんに、聞こえてないのに・・・」
御堂:「今夜も、無理に元気でいる必要はありません。
このラジオを聞いてる30分間だけは、どうか、現実を忘れて、楽しんでください」
月白:「御堂さんの声が聴ける30分間・・・。はぁ・・・、30分は短いな~・・・」
御堂:「さて、早速、今週も、お便りが届いてるので、読ませていただきます。
ラジオネーム・・・、終電後の靴音さんからのお便りです。
・・・いつも、ありがとうございます」
月白:「あ・・・、この人・・・。御堂さんから、御礼を言われてる・・・」
御堂:「御堂さん、こんばんは。
御堂さん、聞いて下さい。・・・私、今週も、終電を逃して夜道を歩いています。
残業の毎日で嫌になります・・・。
御堂さんに質問です。御堂さんは、電車に乗る事はありますか? 教えてください・・・」
月白:「残業の毎日か・・・。皆、疲れてるんだな~・・・。
ふふっ・・・。何だか共感が出来る・・・」
御堂:「電車ですか・・・。
そうですね・・・、普段は送迎して貰ったり、タクシーを使うので、
余り、電車には乗りませんね・・・。
あ・・・、旅行に行く時は、新幹線に乗ったりしますね・・・」
月白:「御堂さん、旅行に行ったりするんだ・・・。何処に行ったりするか気になるな~・・・」
御堂:「電車で思い出したのですが・・・、
数か月前、電車の見える橋で、ドラマのような出会いがありました・・・」
月白:「え・・・!?」
御堂:「詳しくは、話せませんが、上京してから、初めての出来事でしたね」
月白:「聞き間違いじゃないよね? 今、電車の見える橋と言ってた・・・」
御堂:「次回は、皆さんのドラマのような体験なども募集してみるのも良いかもしれませんね。
それでは、お聞きください。終電後の靴音さんからのリクエストで・・・」
月白:(N)「リクエストの曲が流れている間も、私の頭の中には・・・、
さっき聞こえた、御堂さんの言葉が繰り返されていた・・・」
月白:(M)「どうしよう・・・。・・・知りたい・・・。
あの夜・・・、橋の上で、私を助けて、抱きしめてくれた彼は・・・、御堂さんなの・・・?」
御堂:「お送りしたのは、終電後の靴音さんからのリクエストでした」
月白:(M)「・・・でも、ストレートに訊いたりしたら・・・、
違ったとき、どうすれば良いか分からないよ・・・。
でも・・・、このまま、悩み続けるのもな~・・・」
御堂:(M)「ふぅ~・・・。時刻は2時15分・・・。・・・今夜は、先週の方から・・・、頼りは来るだろうか・・・。
ふっ・・・、一体どうしたんだ・・・。俺は・・・」
月白:「・・・よし。・・・こうしよう・・・」
御堂:「続きまして・・・、今週もお便り、ありがとうございます。
ラジオネーム・・・、二二〇(ふたふたまる)さんからのお便りです。
御堂さん、こんばんは。
御堂さんからのアドバイス通り、同僚に気持ちを伝えたら、私の気持ち、ちゃんと伝わりました」
月白:「御堂さん・・・」
御堂:「二二〇さん・・・。同僚の方に、ちゃんと貴方の気持ちが伝わって、私も嬉しいです。
さて、お便りの続きを・・・。・・・ん・・・?
御堂さんに質問です・・・。・・・御堂さんは・・・、・・・好きな食べ物は何ですか・・・?」
月白:「・・・」
御堂:「好きな食べ物ですか? そうですね・・・。
これは、難しい質問ですね。強いて言うなら・・・、銀座の馴染のステーキ店のステーキが好きですね~」
月白:(N)「御堂さんに・・・、質問する勇気が出なかった・・・。
私は・・・、少しはにかみながら、答える御堂さんの声を聞きながら・・・、後悔した・・・」
御堂:「さて、そろそろお別れの時間が近付いたようです。
今週も、この番組を聞いていただき、ありがとうございました。
お相手は、この私・・・、御堂 修一が、お送り致しました・・・」
間
(翌日の夜、公園のベンチ)
月白:(N)「翌日の夜・・・」
間
月白:「はぁ~・・・」
御堂:「こんな夜更けに、溜息を付いて、どうしたんだ?」
月白:「え? 貴方は・・・!?」
御堂:「そんなに驚かれても、困るな・・・。
まさか、二度も会うとはな・・・」
月白:「・・・行けませんか? 女性が一人、深夜の公園で溜息を付いていては・・・」
御堂:「別に悪いとは言ってない。・・・ただ、会う度に、俯いて思い詰めてるな~と・・・」
月白:「貴方には、私の気持ちなんて、分かりませんよ・・・」
御堂:「決めつけは良くないな~。・・・誰か人に話したら、解決する事もあるだろう?
良いから、話してみなよ」
月白:「・・・私、・・・好きな人が居るんです・・・。
でも・・・、一方的な恋心で・・・、片思いなんです・・・。
本当の気持ちを、彼に伝えたくても・・・、伝えられない・・・。・・・怖いんです・・・」
御堂:「片思いか・・・。・・・それは、溜息も付きたくなるわけだな・・・。
あ・・・!」
月白:「どうしました?」
御堂:「もしかして、あの時、飛び降りようと考えてたのも・・・」
月白:「違います! ・・・あれは、仕事の事で悩んでて・・・」
御堂:「何だ・・・。俺はてっきり、恋愛に疲れて、飛び降りようとしてるのかと思った・・・」
月白:「勘違いしないでください・・・」
御堂:「悪かったよ。・・・なぁ・・・、その彼は・・・、君の事・・・、意識してないのか?」
月白:「多分、意識していないと思います・・・。彼からしたら、私は・・・、遠い存在ですから・・・」
御堂:「要するに、身分違いの恋か・・・。それは辛いな~・・・」
月白:「貴方は・・・、そんな時・・・、どうしますか・・・?」
御堂:「そうだな・・・。・・・俺が、君の立場だったら・・・、勇気を出して相手にアタックする・・・」
月白:「え? ・・・でも、相手に拒まれたら・・・」
御堂:「その時は、その時だよ・・・。・・・その相手の事、諦めたくないんだろう?」
月白:「・・・諦めたくないです・・・。
・・・出来る事なら、・・・私の思いを・・・、ちゃんと伝えたい・・・!」
御堂:「自分の本当の気持ち、ちゃんと言えたじゃないか。・・・その意気だ」
月白:「あのう・・・!」
御堂:「何だい?」
月白:「お願いがあります・・・。
・・・あの夜と同じように・・・、もう一度、私を抱きしめてくれませんか・・・?」
御堂:「それが、お願い・・・?」
月白:「駄目ですか・・・?」
御堂:「・・・これで良いかい?」(そっと抱きしめる)
月白:「駄目です・・・。・・・もっと強く、抱きしめてください・・・」
御堂:「全く・・・、君は、我儘だな・・・」(強く抱きしめる)
月白:(N)「彼は・・・、そう言うと、・・・より一層強く、私を抱きしめてくれた・・・。
どのくらいそうして居たのだろう・・・。
気付くと、辺りが明るくなり始めていた・・・」
御堂:「・・・どう? ちゃんと勇気は出た?」
月白:「はい・・・。・・・勇気、貰えました・・・」
御堂:「そう・・・、良かった・・・。
もう・・・、夜が明けるな・・・。俺は、そろそろ行くよ」
月白:「あのう・・・!」
御堂:「何だい・・・?」
月白:「・・・ありがとうございました・・・」
御堂:「御礼は良い。・・・またな」
月白:(N)「彼は、そう言うと、私の前から去って行った」
月白:「また・・・か・・・」
間
月白:(N)「それから1週間後・・・」
御堂:「こんばんは。御堂 修一です。
今週は、先週と違い、春の陽気を感じる日もあり、暖かかったですね。
春は、まだ先ですが、今から桜を見るのが楽しみです」
月白:「御堂さんのラジオ・・・、始まった・・・」
御堂:「今夜も、無理に元気でいる必要はありません。
このラジオを聞いてる30分間だけは、どうか、現実を忘れて、楽しんでください」
月白:「御堂さん・・・」
御堂:「さて、早速、今週も、お便りが届いてるので、読ませていただきます。
ラジオネーム・・・、冷めたスープさんからのお便りです」
月白:「・・・」
御堂:「御堂さん、こんばんは。
御堂さん、・・・私の夫は、私の手料理に、美味しいと言ってくれなくなりました。
それ所か・・・、私の料理を食べずに、外食で済ますこともあります。
一体、どうしたら、昔のように、私の手料理に、美味しいと言って貰えるようになりますか・・・?
教えてください・・・」
月白:「・・・冷めたスープさんも・・・、一人だと思ってるのかな・・・。
美味しいと言って貰えないなんて・・・、辛いだろうな・・・」
御堂:「冷めたスープさん、お便り、ありがとうございます。
・・・そうですね。・・・旦那さんの気持ちは、考える事が大事ですね。
何故、そうなったのか、勇気を出して聞いてみるのは、どうでしょうか?
本心を聞くのは、怖いと思います・・・。
でも、時には、勇気を出して相手にアタックするのも大事です。
頑張ってください・・・」
月白:「あの時と・・・、同じ言葉だ・・・」
御堂:「それでは、お聞きください。冷めたスープさんからのリクエストで・・・」
月白:「いよいよだ・・・」
月白:(N)「私は、勇気を出して、お便りを送った・・・」
間
御堂:「お送りしたのは、冷めたスープさんからのリクエストでした」
月白:「・・・」
御堂:「さて、次のお便りです。
二二〇さん・・・。今週も、お便りありがとうございます。
・・・このラジオネームからでしょうか・・・。
この時間、2時20分になると・・・、貴方からのお便りが来ないかと待ってしまいます・・・」
月白:「御堂さんも・・・、私の事・・・、考えてくれてたんだ・・・。それなら・・・、どうか神様・・・、お願い・・・」
御堂:「御堂さん、こんばんは。
今日は、勇気を出して言いたいことがあります。
私は、病院では、沢山の患者さんの声を聞きます。
でも、前に伝えた通り、私は仕事で疲れていました。
そんな時・・・、私は、電車の見える橋で、一人の男性に会いました・・・。
・・・」
月白:「・・・」
御堂:「・・・私は、その彼に、救われ・・・、恋をしました。
その彼と、また会いたいです・・・。
もし・・・、その彼も・・・、私と同じ気持ちなら・・・、
明日の午後2時20分・・・、公園の近くの喫茶店で、待っています・・・。
目印は、椿の花のブローチです・・・」
月白:「これが・・・、私の素直な気持ちです・・・。
例え、この先・・・、番組に便りが送れなくなっても良い・・・。
貴方に・・・、伝えたかったの・・・」
御堂:「二二〇さん・・・。・・・私から言えることは一つ。
その彼に・・・、二二〇さんの気持ちが、伝わることを願っています・・・。
それでは、お聞きください・・・。二二〇さんからのリクエストで・・・」
月白:(N)「御堂さんは、いつもと同じように、私のお便りを読み、リクエスト曲を流した・・・。
ただ・・・、それだけだった・・・」
御堂:「さて、そろそろお別れの時間が近付いたようです。
今週も、この番組を聞いていただき、ありがとうございました。
お相手は、この私・・・、御堂 修一が・・・、お送り致しました・・・」
間
(公園の前の喫茶店)
(午後2時。早めに付いた月白は、席に座っていた)
月白:(M)「御堂さん・・・」
(喫茶店のドアが開く音)
御堂:「・・・一人だ。・・・席に案内してくれ・・・」
月白:(M)「あれは・・・、あの時の彼・・・。
やはり・・・、貴方が・・・、御堂さんなのね・・・」
御堂:「珈琲のブレンドを一つ・・・」
月白:「店員さん・・・。私にも、珈琲のブレンドを・・・」
御堂:「ん? ・・・君は・・・?」
月白:「この喫茶店の珈琲・・・、美味しいんですよ。
また会いましたね・・・」
御堂:「今度は昼に会うとは・・・、君とは、何か縁を感じるね・・・」
月白:「私も、そう思います・・・。あのう・・・」
御堂:「何だい・・・?」
月白:「椿の花は・・・、お好きですか・・・?」
御堂:「・・・」
月白:「私は、好きなんです・・・。
知っていますか・・・? 椿のアロマオイルもあって・・・、良い香りなんですよ・・・」
御堂:「そうか・・・。
あぁ・・・店員、すまない・・・」
月白:「すみません・・・。私、ベラベラと・・・。
珈琲・・・、飲みに来たんですよね・・・」
御堂:「あぁ、そうだ・・・。・・・此処の珈琲は、美味しいな・・・」
月白:「そうですね・・・。あれ・・・? 可笑しいですね・・・。
今日は、いつもより・・・、苦く感じます・・・」
御堂:「・・・御馳走様・・・。・・・お会計を頼む・・・」
月白:「あのう・・・!」
御堂:「何だ?」
月白:「命を救って貰った恩は・・・、私・・・、これからも・・・、忘れません・・・」
御堂:「あぁ・・・。俺も、あの夜の事は・・・、決して忘れない・・・」
月白:「お仕事・・・、頑張ってください・・・」
御堂:「君も・・・。頑張ってくれ・・・」
月白:「はい・・・」
御堂:「それじゃあ・・・、俺は行くよ・・・」
月白:「・・・待って・・・!」
御堂:「どうした・・・?」
月白:「私・・・、その・・・。・・・本当は・・・!」
御堂:「また来週・・・、2時20分に待ってる。・・・じゃあな」
間
月白:(N)「彼は、そう言うと・・・、喫茶店を後にした・・・。
・・・本当は、気付いていた・・・。
・・・この恋が実らないことを・・・。
医療者として、私は患者の命を救い・・・、
彼は・・・、声で、疲れた人々の心を救う・・・。
私と彼では・・・、住む世界が、違い過ぎたのだ・・・」
御堂:「こんばんは。御堂 修一です。
お元気でしょうか? 今週も、眠れない方々の為に・・・、お届けいたします」
月白:(N)「それでも、私は・・・」
御堂:「今夜も、無理に元気でいる必要はありません。
このラジオを聞いてる30分間だけは、どうか、現実を忘れて、楽しんでください」
月白:(N)「彼のラジオに・・・、お便りを送り続ける・・・。・・・、二二〇の時間に・・・」
終わり