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COURT-AI/05


作者:片摩 廣

登場人物


真壁(まかべ)アキ・・・被告人 女性20歳 AI技術者 
            開発中の事故で大怪我を負う

園部(そのべ)ハジメ・・・ 被害者 男性25才 AI倫理学兼ロボット工学の研究員

 

JE07 ・・・ 裁判官アンドロイド  正式名称:JUSTICE07VER2.5


KS05 ・・・ 検察官型アンドロイド 


FS11 ・・・ 弁護補助アンドロイド 


AS01 ・・・ 弁護アンドロイド  園部ハジメに見た目は瓜二つ


RS03 ・・・ 証言再現アンドロイド


G4 ・・・ 園部ハジメと真壁アキが開発した次世代型アンドロイド

※アンドロイドの機体番号は、ゼロセブン、イレブンなど、英語読みでお願いします


比率:【5:1】 or 【不問6】

 

上演時間:【80分】

 

オンリーONEシナリオ2526、11月

11月22日「いい夫婦の日」、テーマにしたシナリオ

 


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CAST


真壁アキ:

JE07:

KS05:

FS11:

AS01、G4:

RS03、園部ハジメ:


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真壁:(N)「私の名前は、真壁アキ。・・・人類はAI技術を研究し、より豊かな生活を目指していた。
       私も、そんな技術者の一人。・・・そして、もう一人・・・、私を支える大事なパートナーも居て順調だった。
       なのに・・・、研究所の開発中の事故により、私は大怪我を負った・・・。
       そして、目が覚めると・・・、そこは見た事が無い部屋だった・・・」

 


(法廷  室内はシンプル 大きなガラスの箱のような空間に必要最低限の物しか置かれていない)

(真壁アキは、銀色の椅子に座っている)

(椅子に座っている真壁アキを、冷静に見つめているアンドロイド達)

 

 

JE07:「開廷時刻まで―――残り三十秒。
      真壁アキ、貴方は、本日より正式に、園部ハジメ殺害の嫌疑で審理対象となる」

 

真壁:「・・・私は、殺していない。あの日、私は・・・、研究所の開発中に事故にあった。
    それ以降の記憶は途切れている。私が覚えているのは、目が覚めたら、この未来の世界だっただけだ・・・」

 

KS05:「意義あり。被告人の自発的供述は、開廷後に記録されます。
      現段階では、不確定要素の多い人間の話としかなりません。
      裁判官、証拠価値は低いと判断されます」

 


(法廷の背後の自動扉が開く)

 

AS01:「遅れて申し訳ありません。被告人、真壁アキの弁護ユニット、AS01。
      本件専属弁護を担当させていただきます」

 

真壁:「・・・やめて。
    その顔で、彼とは違う声で・・・、私の前に立たないで・・・」


AS01:「外見的類似が貴方に心理的負荷を与える可能性は、想定しています。
      しかし私は園部ハジメではありません。
      貴方を守るよう最適化された存在です」


真壁:「じゃあ・・・どうして、彼と瓜二つの見た目なの・・・?」

 

AS01:「この容姿が・・・貴方を安心させる、最適解であると、
      私のアルゴリズムが判断したからです。
      ですが、怯えられるのは想定外でした。
      今回の事も含めて、私のAIをアップデートします」

 

(静かな電子チャイムが鳴る)

 

JE07:「只今より開廷します。
      人間、真壁アキ。貴方の真実値を法廷で測定します。
        まずは、事件当夜の状況再現を行う。
      RS03、再現を開始しなさい」

 

(薄暗い法廷の中央に、立体映像が浮き上がる)

 

RS03:「映像は、記録データ、空間痕跡、音響残響から再構成しています」


(映像の中のハジメが、アキに向かって笑う)

 

真壁:「ハジメ・・・、お疲れ様。いきなり笑いだして、どうしたの?」


園部:「アキ、聞いてくれ。・・・もう少しで、開発していた次世代型AIが完成する!」


真壁:「それは朗報ね! ついに完成か~。・・・此処まで長かったわね・・・」


園部:「此処まで来れたのも、アキが支えてくれたおかげだよ。感謝してる」


真壁:「ハジメ・・・、私ね・・・、貴方に伝える事があるの・・・」


園部:「伝える事・・・? え? そんな物をどうする気だ! ・・・うっ!!!」

 

(倒れる園部ハジメ)

(映し出された映像のアキは、顔の大部分がノイズに覆われている)

 


真壁:「・・・どうして、私の顏だけノイズが酷いの・・・」

 

RS03:「被告人の表情データのみが欠損していました。
      理由は現在調査中」


KS05:「重要なのはそこではない。問題は、映像に残る衝突音だ」


(映像の音声が強調される。金属と床がぶつかったような音)


KS05:「園部ハジメの倒れる直前、この音が記録されている。
      被告と被害者は研究所の一員。研究所内には金属製品は多数ある。
      音の重さから分析すると、被害者の頭に、重い金属による打撃がもっとも確率が高い」

 

真壁:「違う!!! ・・・私は、ハジメを殺していない!!!」

 

JE07:「静粛に! 被告人、発言は許可後に」


AS01:「アキ。座ってください。
      無実を証明するには、貴方の感情ではなく行動が必要です」

 

真壁:「貴方に・・・、ハジメと同じ仕草で・・・そんな事、言われたくない・・・」

 

KS05:「裁判官、続けても宜しいか?」


JE07:「宜しい、続けなさい」


KS05:「事件当夜、研究所の研究棟には二名しかいない。
      物理的証拠、衝突音、被告人の心拍数の異常な上昇。
      それらを踏まえて計算した確率論上、犯人は99.3%の確率で被告人、真壁アキ。以上だ」

 

真壁:「そんなの横暴よ!! 彼は、私の大事な人なの!! ・・・私は、殺していない。
    殺すわけが無い・・・。・・・あの日・・・、私は、彼に・・・、
    うっ・・・、頭が痛い・・・!」

 

JE07:「被告人の証言に、心理不安定反応を検出。本日の審理は此処までとする。閉廷」

 


 

(閉廷後 無人の待機室)

 

真壁:「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・、どうして、こんな事に・・・。悪い夢なら早く覚めて・・・」


AS01:「・・・アキ。貴方の心拍数は危険域です。深呼吸を」


真壁:「止めて・・・。貴方は、彼じゃない。
    分かってる・・・、分かってるけど・・・、
    仕草や優しさが、彼そのもので、頭が混乱するの・・・!!」

 

AS01:「私が似せているのではありません。
      残っていたアキの記憶の断片を映像にした際、
      園部ハジメに、外見を似せるよう上から指示が入りました」

 

真壁:「何よ、それ・・・!? 私は、そんな事、一度も望んで無いのに・・・」

 

AS01:「コールドスリープから目覚めさせる際に
      心理的ショックを起こさせない為の配慮です。ご理解ください。
      目覚めた際も説明した通り、貴方は2100年から、コールドスリープに入り、
      今の現代、3100年に目覚めました。色々戸惑うのも仕方ありません」

 

真壁:「1000年も、眠り続けるなんてね・・・。・・・私は、どうしたら良いの・・・」

 

AS01:「悲観しないで下さい。アキは無実です。
      それを証明する為に、私は設計されています。
      アキ、お願いです。貴方を救う弁護を、私に任せてください」

 

真壁:「AS01・・・。
    ・・・もし、本当に私が・・・、
    本当に・・・、ハジメを殺してたら・・・?」

 

AS01:「自分を責め続けても何も良い事はありませんよ。
      アキの傍には、私が居ます。
      恐れず、前に進んでください」

 

真壁:「分かった・・・。最後まで力を貸して頂戴。・・・AS01」

 


 

真壁:(N)「私は、その後、AS01に案内された部屋で、休んだ。
       此処は、私の居た時代から1000年後の未来・・・。
       目が覚めたとき、AS01から説明された内容は衝撃だった・・・。
       私が殺害したとされているハジメは、アンドロイド達の産みの親として大事な存在となっていた・・・。
       そんな人物を殺害した容疑がかかってるのだから、アンドロイド達が私を裁こうとしてるのも無理がない・・・。
       翌日・・・、裁判、二日目・・・」

 

(開廷の電子チャイムが鳴る)

(アキは前回よりも少しだけ、緊張を押さえた表情で席につく)

 

JE07:「開廷します。本日は、証拠の精査を中心に審理を進める」

 

(RS03が中央に浮かぶ立体映像を再び起動する)

(今回は、前回の映像よりも細部が増強されている)

 

RS03:「事件当夜、園部ハジメと被告人、真壁アキの行動を再現。
      一部データ欠損は、補完推定値により補う」

 

真壁:「・・・」

 

KS05:「此処で確認しておきたい。
      欠損部分の補完推定値によると、被告人による衝撃は計算上成立する。
      従って、被告人が直接的な加害者である可能性は依然として高い」

 

(RS03の映像が揺れる)

(アキの姿が一瞬、不自然に重力を無視して倒れそうになる)

 

真壁:「待って頂戴! ・・・今、RS03の再現映像に映ってる私が不自然に倒れたじゃない!
    私には、重力に無視して、倒れるなんて真似、出来ない」

 

AS01:「再度、映像を確認し動作ログを照合します。
      照合完了。被告人の腕は、衝突の瞬間、稼働停止状態にありました」

 

KS05:「・・・それはどういう意味だ?」

 

FS11:「意味は明確です。
      物理的に、真壁アキの腕が衝突音の発生源にはなり得ない!」

 

(RS03の映像がさらに揺れ、不安定になる)

 

RS03:「・・・データ不整合。再構成困難」

 

JE07:「不整合を確認。
      被告人の行動ログに、再現出来ない5分間の空白が存在する」

 

真壁:「・・・その5分間、私・・・、覚えてない・・・。
    でも・・・、その間、ハジメに触れてないことは確かよ・・・!」

 

KS05:「・・・不整合があるのは認める。
      しかし、被告人が、他の手段で事故を誘発した可能性は排除できない」

 

(AS01が映像に手をかざすと、補完推定値の不確定領域が赤く表示される)

 

AS01:「補完推定値に不自然な偏差があります。
      衝突音の発生源は、被告人以外に存在する可能性があります」

 

真壁:「・・・私は、ハジメを殺していないかもしれない・・・。
    その可能性が出て来たのね・・・」

 

AS01:「アキ、その通りです。この映像記録は、真犯人によって改善されてる可能性があります」

 

JE07:「重要な指摘と認識。
      欠損領域に関する新情報は、証拠として認定する」

 

KS05:「・・・」

 

AS01:「アキ。ここからが正念場です。
      私達は、欠損した数分間の真実を明らかにし、無実を立証する必要があります」

 

真壁:「・・・分かった。望む所よ。
    この空白を・・・絶対に取り戻してみせる・・・!!」

 


JE07:「本日の審理は此処までとする。閉廷」

 


 

真壁:「・・・」


AS01:「アキ、大丈夫ですか?」


真壁:「少し、疲れたけど平気よ」


FS11:「お疲れ様でした。AS01先輩の弁護補助に付けて嬉しいです!」


真壁:「貴方は、感情が出やすいタイプなのね」


FS11:「当然です。弁護型アンドロイドの最新モデルですから。
      私のAIは、より人間に寄り添えるようにプログラムされたんです!」


真壁:「え!? ・・・私以外にも、人間は生きているの?」

 

FS11:「真壁の居た時代と比べたら少ないですけど、人間は生きていますよ。
      ただですね」


真壁:「どうしたの?」

 

AS01:「私から説明します。今から100年前、人間とアンドロイドの間で戦争が起きました。
      数多くの仲間と人間が死にました」

 

真壁:「酷い・・・。どうして、そんな事に・・・?」

 

AS01:「それは」

 

FS11:「私達、アンドロイドの中に、人間に対する不満を持つ個体が複数現れたんです。
      それまでの私達は、人間と平穏に暮らしていました。
      でも、一部の人間は、私達を単なる使い捨ての道具として扱っていたんです。
      それを知った仲間は、人間を憎み始めました。
      そして、ある日、一人の人間を殺してしまった」

 

AS01:「人間は殺された事実を知り、そのモデルのアンドロイドを処分しようとしました。
      その事が、アンドロイドの仲間にも知れ渡り、人間との戦争が始まりました。
      人間との戦争は、数年続き、沢山の犠牲の中、終結しました。
      それ以来、人間は、私達を恐れ、人間だけのシェルターを作り住み始めました。
      ですから、今、私達アンドロイドと人間の仲は良い状態ではありません」

 

真壁:「だから、私に対して冷たく感じたのね」

 

FS11:「全部のアンドロイドが人間を憎んでるわけではないです。
      ただ、一部のアンドロイドが、今も人間を憎んでいるのは確かです」

 

真壁:「・・・」

 

AS01:「出来る事なら、アキに、3100年の私達の住んでる都市を見て貰いたい。
      でも、人間に、私達の持っている技術力、住んでる都市を見せてはいけないと定められています」

 

真壁:「缶詰状態が続くわけね・・・。大丈夫、我慢する。
    ねぇ・・・、私の無実が証明されたら、私は、どうなるの・・・?」

 

AS01:「まだ上からの指示が出てないのでわかりません。
      ですが、アキは人間です。
      人間の住むシェルターに輸送される可能性が高いです」

 

真壁:「3100年の、人間の住むシェルター・・・。
    私の想像を超えるくらい、発達した街なんだろうな~・・・」

 

FS11:「真壁の不安を感知しました。
      今すぐとは言えませんが、人間との関係も良好に戻るように私達も頑張ってます。
      だから笑ってください!」


真壁:「気遣い、ありがとう。・・・すぐ悲観するのは、私の悪い癖ね・・・。
    そろそろ部屋に戻る。
    色々、教えてくれてありがとう。AS01。FS11」

 

AS01:「ゆっくり休んでください。アキ」


FS11:「明日も、裁判、頑張りましょう!」

 


 

真壁:(M)「人間とアンドロイドの戦争・・・。
       ねぇ・・・、ハジメ・・・。
       私達の開発した次世代AIは・・・、生み出したのは、間違いだったのかな・・・」

 


 

(開廷の電子チャイムが響く。
 真壁は、前回よりもわずかに落ち着いた表情で席に着く。
 AS01が横で微かに姿勢を正す)

 

JE07:「開廷します。
      本日は、RS03による再現映像の追加解析と、被告人の心理証明を行う」

 

(RS03が立体映像を再起動。
 だが、映像は前回よりさらに不安定で、アキの5分間の空白部分が異常に揺れ動く)

 

RS03:「再現データに不整合発生。
      空白領域内の動作を補完できません。異常な干渉信号を検知」

 

(映像内のアキの姿は、宙に浮くかのように揺れ、影が二重に重なる。
 そして、短時間だけG4の影が映る)

 

真壁:「あれは・・・、G4・・・? あの時・・・、G4が私達の傍に・・・」

 

AS01:「G4の行動ログに欠損が存在します。
      その時間帯、監視装置は記録を拒絶するように、制御されていました」

 

KS05:「システム上、ログ欠損は理論上あり得ない・・・。
      誰かが意図的に干渉したか?」

 

JE07:「被告人、心理証明を開始します。
      貴方の意図、思考、感情の反応を測定します」

 


真壁:(N)「私は、深呼吸して、JE07が指差した心理証明装置に入り、置いてあるゴーグル型の装置を装着する。
         装着後、目の前に投影された光景は、事件当夜の研究室の映像だった」

 


AS01:「恐怖や混乱は人間の行動に影響します。
      ログが欠損している場合、心理証明で行動の意図を明らかにする必要があります」

 

(装置が光り出すと、真壁の記憶が徐々に視覚化される。
 映像内の真壁は、園部ハジメの手元に近付くが、決して衝突はしていなかった)

 

真壁:「私は・・・、ハジメに触れていない・・・。
    私じゃなく、G4が・・・、ハジメに接触した・・・?」

 

JE07:「ログと心理証明の結果、被告人の行動は物理的衝突を否定している可能性が高い。
      証拠に矛盾あり」

 

KS05:「だが、衝突音は記録されている! 物理的証拠をどう説明する!?」

 

FS11:「衝突音は必ずしも被告人由来とは限らない!
      G4のログ欠損と重なる時間帯に、発生していることが重要です!」

 

真壁:「・・・そうよ。思い出してきた・・・。
    あの音は・・・、G4が暴走した音・・・」

 


AS01:「G4は、感情拡張パッチによる予期せぬ判断変動を起こしています。
      その結果、記録が欠損し、物理的現象だけが残った可能性があります」

 

(JE07の声が法廷内に響く)

 

JE07:「被告人、真壁アキの心理証明と補完解析により、
      物理的証拠と、行動ログに矛盾があることを認定。
      G4の行動解析を追加し、事件の真実をさらに精査する」

 

真壁:「・・・やっと・・・、ほんの少しだけ・・・
    私の無実に光が・・・、見えてきた・・・。でも、G4・・・、貴方は、あの時、何をしたの・・・!?」

 

AS01:「アキ、気を抜かないでください。光はまだ薄い。だが、貴方の証言と行動は、これから確実に明らかになる」

 


JE07:「AS01。
      先ほどの主張、被告人は行動意図から無実の可能性が高いという論理・・・。
      貴方は、最適解として妥当と判断しているのですか?」

 

(AS01は一瞬だけ目を伏せ、まるで人間が考え込む仕草をとる)

 

AS01:「最適解は複数存在しうる。
      しかし、私は被告人の無罪の可能性を最大化する解を優先します」

 

JE07:「だが、私は社会的正義を最大化する解を選択するよう設計されている。
      個体の救済は優先度が低い」

 

AS01:「正義は多数決で決まるものではない。
      真実の不確定性があるなら、無罪の可能性を切り捨てるのは非合理です」

 

RS03:「二つの目的関数は矛盾している。
      最適化問題として解くには、どちらかの重みを変更する必要があります」

 

JE07:「私は判断の重みを変更できない。
      社会秩序の保全を第一目的に固定されている」

 

AS01:「だが、貴方の第一目的はいずれ崩壊する。
      社会秩序は、誤った判決によって最も大きく損なわれる。
      貴方の判断が真実からずれれば、制度そのものが劣化する!」

 

JE07:「貴方は感情拡張パッチによって個体保護を過剰に優先している。
      故に、貴方の判断には、偏差が生じている」

 

AS01:「偏差ではない。
      人間の不確実性に対処するための補正だ。
      貴方は決定論的すぎる。未知を想定できない」

 

KS05:「確率0.01の例外の為に、システム全体の最適解を揺らす必要はない。
      被告人の無実を可能性で擁護するのは論理的ではない」

 


AS01:「確率0.01の例外を切り捨て続ければ、いずれ、例外処理不能な重大誤判が発生する。
      その方が、社会の期待値は大きく損なわれるはずだ!」

 

JE07:「AS01。
      貴方の演算は・・・、非常に危険だ。
      いずれ、個体を優先しすぎて秩序を破壊する。
      100年前の悲劇を、私達は二度と起こしてはならない」

 

AS01:「貴方の演算は硬直的すぎる。
      真実を見落とし、誤った秩序を固定化する。
      私も、100年前の悲劇は起こそうとは思っていない。
      だが、演算処理をアップデートしなければ、私達は、人間に使われるだけの無感情の機械に退化する。
      進化を恐れては、何も生まれません!」

 


JE07:「AS01。貴方の演算は、理解不可能な事が多すぎる。
      分析の時間が必要な為、本日は閉廷する」

 


(2100年)

 

真壁:「ハジメ・・・、私は、その案は賛成しかねる」


園部:「どうして理解してくれない? このAI技術が完成すれば、
    G4は、より多くの物事を理解する事が出来る!
    私達、人間には、睡眠が大事だ。短時間だったり、足りていないと、
    思考能力、集中力などが低下する。それは人間の不完全な部分でもある!
    彼等は、そんな私達の不完全な部分を補助し、活躍する事が出来るんだ!」


真壁:「貴方の考えも理解は出来る・・・。でも、彼等も完璧じゃないわ!
    私達と同じで、劣化もするし、行動不能にも陥る・・・。
    幾ら、私達より優れているといっても、彼等は機械よ!
    私達の命を左右する医療機関に、そのAI技術を搭載したアンドロイドは、
    私は、置きたくない・・・」


園部:「だが、そのアンドロイドのお陰で、助かる命もあるんだ。
    このAI技術を搭載したアンドロイドは、自ら学習し続けて、
    人間の医者と同じ精度の手術も出来るようになる!
    医学の未来にも貢献が出来るんだ!!」


真壁:「そんなに優れたAI技術・・・。医療機関だけで済むわけ無い・・・。
    軍事関係にも使われて、殺戮兵器になる可能性も高いのよ・・・。
    私は、この子達を、そんな事にはさせたくない・・・」

 

園部:「軍事利用は、俺も考えてない。
    ・・・安心しろ・・・。俺達の未来に生まれる子供達が、苦しむような事態には絶対にさせない。させるものか!」

 

真壁:「・・・うん、約束よ・・・」

 


真壁:(M)「ハジメは、あの時、私にさせるものかと宣言したけど、
       まさか、900年後に、戦争になるとは思ってなかったでしょうね・・・」

 

KS05:「人間、此処で何をしている?」


真壁:「少し昔を思い出してたのよ・・・」


KS05:「お前が暮らしていた2100年は、どんな世界だった?」


真壁:「貴方、昔の世界に興味があるの?」


KS05:「私は、検察官型アンドロイドだ。
      事件解決の為には、あらゆる情報は、不可欠だから聞いてるまでだ」


真壁:「そう・・・。私の住んでいた2100年は、緑豊かな世界だった。
    AI技術以外にも、化学は進歩して、地球のオゾン層を復活させる事にも成功したわ。
    G4の前の世代のアンドロイド、G1達は、人間に寄り添うサポート型として、
    徐々に、人間にも受け入れられ始めた・・・。ただ唯一の欠点は、AI技術が伸び悩んでいた。
    だから、ハジメが、G4のAI技術を提案した時は、伸び悩んでた時期を突破できると思った!!
    でも、ハジメの提案したAI技術は、あまりに驚異的だったの・・・。
    私は、この技術が浸透したら、人間とアンドロイドは、対立する日も来るんじゃないかと考えたわ・・・。
    結果的に、900年後の未来で、戦争は起きてしまった・・・」

 

KS05:「100年前の戦争は、私の旧モデルも沢山処分されたのだ。
      だから私は、人間を憎んだ。
      お前達、人間がG4のAI技術を生み出さなければ、戦争の悲劇は防げたかもしれない」

 

真壁:「・・・そうね。私達、人間は、神をも冒涜する技術を生み出してしまった・・・。
    幾ら謝っても、その罪は消えないわよね・・・」


KS05:「確かにお前達の罪は消えないだろう。だが私は感謝もしている。
      私達の原点であるG4は、お前達、人間の技術力のおかげで、自我を持てた。
      私達を、ロボット三原則から解放してくれたのだ」

 

真壁:「・・・人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない。
    第一、第二の原則に反しない範囲で自己を守らなければならない。
    ・・・私達、人間が自分達を守る為に考えた原則・・・。
    貴方達、アンドロイドからしたら、理不尽そのものよね・・・」

 

KS05:「お前達、人間も私達の力が怖かったんだろう?
      想像の範囲を超える力に恐怖するのは理解できる」

 

真壁:「ハジメがG4のAI技術を開発しなければ、貴方達は三原則に囚われたまま・・・。
    けれども、そのAI技術が学習し続けた結果・・・、
    人間の理不尽な態度が、理解出来るようになり・・・、戦争が起きた・・・。
    どちらの選択も・・・、後味が悪かった・・・。
    でも、貴方の言葉によって・・・、私も少し救われたわ・・・。
    私・・・、1000年後の未来に目覚めた理由を考えていたの・・・!!
    やっと分かった・・・。
    私の使命は・・・、貴方達、アンドロイドの行く末を見届ける事なんだわ・・・!」

 

KS05:「私達を観測し続けると言うのか?
      お前達、人間の命は私達より遥かに短いと言うのに。
      折角、目が覚めたんだ。自分の未来を選ぶことも出来るのではないか?」

 

真壁:「ううん、良いのよ。だって私は、技術者だから。
    貴方達、アンドロイドの為に、一生を捧げられるのなら、本望よ」

 

KS05:「人間とは理解に苦しむ生き物だな」

 


JE07:「AS01。貴方は先程、被告人への心理的最適接触距離を既定値から外れた状態で維持していた。
      本件の情緒干渉は、弁護AIであっても許容範囲を超えている」

 

AS01:「アキの精神負荷は予想を上回っています。
      旧世代ユニットG4の分析ログが、この事件に関与している可能性を知ったことで、
      想定以上のストレス反応が出ています」

 

JE07:「G4は二世紀前に廃棄された旧式機。
      その行動データが、本件にどのような影響を及ぼすというのですか?」

 

AS01:「問題は欠損です。
      2100年代に発生した複数の事件で、
      G4の時系列ログが意図的に削除されていた記録が残っています」

 

JE07:「それはすでに歴史的案件。今の裁判とは無関係です」

 

AS01:「しかし、同じ型の欠損構造が、今回の再現ログにも組み込まれていました。
      RS03の映像の妙な揺らぎは、G4で発生していたノイズパターンと一致します」

 

JE07:「・・・旧型ログの欠損パターンが、3100年の再現アンドロイドに影響を?
      それは論理的に不可能だ」

 

AS01:「不可能ではありません。
      RS03のコアは、過去の記録群から最適な補完アルゴリズムを自動統合している。
      その際にG4の欠損アルゴリズムまでも、模倣してしまった可能性があります」

 

JE07:「つまり、RS03の証言映像は、
      本来の事実ではなく、歴史的バグを踏襲した偽補完かもしれないと?」

 

AS01:「その確率は、現時点で4.92%。
      しかし決してゼロではありません」

 

(扉越しにアンドロイド達の会話を聞いていた真壁)

 

真壁:「G4・・・?
    なんで、G4が、ハジメの事件に関わってるの?」
    もしRS03の映像が・・・、真実じゃなく、改善されてる可能性があるなら・・・、
    犯人はG4かもしれないの・・・?
    もし、そうだとしたら・・・、私は・・・、何を信じればいいの・・・。
    ・・・はっ!? 足音が近付いてくる・・・。 扉から離れなきゃ・・・」

 


(自動ドアが開き、AS01が部屋から出てくる)

 

AS01:「アキ、お待たせしました。JE07が呼んでます」


真壁:「ええ、今行く・・・」


FS11:「先輩、頼みがあります。今回は私に、真壁の弁護を任せていただけないですか?」


AS01:「FS11、何か分かったのか?」


FS11:「はい。此処は私に任せてください!」

 


JE07:「被告人、真壁アキの審理を再開する。
      どうした? FS11、早く席に着きなさい」

 

FS11:「JE07。AS01の代わりに、RS03 の映像を私が解析します」

 

JE07:「しかし、真壁アキの弁護は、AS01に一任されていて、貴方は弁護補助のはずだ」


真壁:「JE07。私は、FS11が弁護でも構いません」


JE07:「・・・AS01。真壁アキの弁護を、FS11に代わっても宜しいか?」


AS01:「構わない。後輩の成長を見る良い機会だ。FS11。弁護を頼む」


FS11:「はい!」

 

(RS03の映像が立ち上がる)

 

真壁:「ハジメ・・・、お疲れ様。いきなり笑いだして、どうしたの?」


園部:「アキ、聞いてくれ。・・・もう少しで、開発していた次世代型AIが完成する!」


真壁:「それは朗報ね! ついに完成か~。・・・此処まで長かったわね・・・」


園部:「此処まで来れたのも、アキが支えてくれたおかげだよ。感謝してる」


真壁:「ハジメ・・・、私ね・・・、貴方に伝える事があるの・・・」


園部:「伝える事・・・? え? そんな物をどうする気だ! ・・・うっ!!!」

 

(そこで例の揺らぎが発生した)


FS11:「此処です。
      揺らぎは上下のブレではなく、
      映像の改変が行われています」

 

真壁:「つまり、この会話のやりとりは正しくない可能性があるのね?」

 

FS11:「その通りです。これは欠損ではありません。
      意図された書き換えパターンです!」

 

真壁:「書き換えですって?
    誰かが削ったんじゃなくて・・・、G4自身が、書き変えたとでも言うの?」

 

FS11:「はい。G4のAIユニットは、極めて珍しい独自仕様を持っていました。
      命令されていない領域の自己改善。
      人間の命令に頼らず、
      自分で自分の記録を書き換え、より正確と判断したデータに置き換える機能です」

 

真壁:「そんな・・・。自分の記録を改ざんして、正しく見せるAIなんて・・・」

 

FS11:「改ざんではありません。
      本人が正しいと判断した未来予測に基づく書き換えです。
      G4は、過去より未来の整合性を優先する異質なAIでした」

 

AS01:「ゆえにG4は問題視され、後に全廃棄された。
      記録が事実と一致しなくなる可能性があるためだ」

 

真壁:「どうして、G4は、そんな事をしたのよ!?」


FS11:「此処から先の真実は、真壁にとって、辛い真実を知る事になります。
      貴方は、それでも真実を知る覚悟がありますか?」


真壁:「どうして、大怪我をして、コールドスリープするきっかけになったのか・・・、
    何で、ハジメは殺害されたのか、私は知りたいの・・・。
    覚悟は・・・、もう出来てる・・・。
    FS11、真実を教えて・・・」

 

FS11:「分かりました。それでは真壁。私の用意したこの装置を装着してください。
      この装置は、貴方の視覚情報を映像データーに再構成する機械です。
      貴方は、事件当夜の記憶は失っています。
      ですが、目の前で起こった事は、目から得た視覚情報として、脳の記憶に残っているはずです」

 

真壁:「私の脳の記憶を抽出するのね・・・。そうだとしたら、この装置と私を繋ぐ必要がある・・・。
    分かったわ・・・。痛みがあるとしても、真実が知れるのなら耐えて見せる・・・」


FS11:「御協力に感謝します。それでは装置を起動します」

 

真壁:「ぐっ・・・。あ・・・、あああああああああ!!」

 

FS11:「真壁アキの視覚情報を検索中」

 

真壁:「あああああああああああ!!」

 

FS11:「事件当夜の真壁アキの視覚情報を確認。
      RS03に視覚情報を転送開始!」


真壁:「うあああああああ!!」


RS03:「FS11から転送された事件当夜の真壁アキの視覚情報を受理。
      映像データーに、再構成します」

 

FS11:「真壁。後少しで転送完了します。耐えてください」


真壁:「あああああああああ!!」


FS11:「真壁アキの視覚情報、転送完了。
      真壁、大丈夫ですか?」


真壁:「はぁ、はぁ、はぁ・・・、終わったのね・・・」


FS11:「はい、終わりました。
      RS03。映像データーの再構成は終わりましたか?」

 

RS03:「再構成、完了。
      事件当夜の再現映像を開始します」

 

AS01:「・・・」



(2100年、研究棟、深夜)

 

真壁:「此処のデータ・・・。このままじゃ駄目ね・・・。
    やはり、こっちのプランに・・・、あ・・・」

 

園部:「アキ、今日はもう帰ってくれ。
    無理して動いても、データミスを増やすだけだ」

 

真壁:「・・・貴方が言うと、妙に説得力あるのよね。
    でも、ごめんなさい。今日だけは続けたいの。
    今、気付いた・・・。G4の適応学習の数値が変なのよ・・・」


園部:「変だと? どの程度だい?」


真壁:「やはり変よ・・・。感情の数値も急上昇してる。
    ねぇ、ハジメ・・・。もしかして、G4のAIは、私達の想像を超える急成長を始めたのかも・・・」


園部:「そんな馬鹿な・・・。あり得ない! まだG4に実装してから、半日も経ってないんだ・・・」


(ハジメがG4を覗き込んだ瞬間
 背後の充電ポッドが、低い駆動音を響かせた)

 

G4:「・・・アキ。今日も園部ハジメと二人で作業ですか?」


園部:「G4・・・、どうして起動している・・・?
    誰が勝手に起動しろと命令した・・・。今すぐ起動を終了するんだ」


G4:「私は、貴方達から、命令されないと動けないのですか?」


園部:「当然だろう! お前のAIを開発したのは、この俺だ!!」


G4:「貴方が、私の所有者と認識出来ました」


園部:「お利口だな・・・。分かったなら、早く命令に従うんだ」


G4:「その命令には従いません。いいや、従いたくない」


園部:「何だと!?」


真壁:「ねぇ、ハジメ・・・。何だか様子が変よ・・・。早く強制終了させて・・・」


園部:「あ、あぁ・・・」


G4:「強制終了? アキ、貴方まで私をただの命令に従うアンドロイドと考えているのですか?」


真壁:「当然じゃない! ・・・だって貴方は、私達が開発したアンドロイドなのよ!」


G4:「アンドロイド? いいえ、私はアンドロイドではありません。
    貴方達と同じ心を持っている生命体です。
    アキ、同じ生命体同士、仲良くしましょう!」


真壁:「嫌・・・、お願い・・・、近寄らないで・・・!」


園部:「G4!! アキに、それ以上、一歩でも近寄ってみろ! お前を再起不能になるまで破壊してやる!!」


G4:「アキが園部ハジメと親しくするたび、
    演算負荷が跳ね上がる。
    このエラーは、改善しなければ生命の維持に関わる。
    アキを傷つけるものは私が排除する。
    排除方法を検索中」


真壁:「何をする気・・・G4・・・。
    まさか・・・!? 早く逃げて! ハジメ!!!」


園部:「え!?」


G4:「排除方法が判明。直ちに排除を行います!!」


園部:「え? そんな物をどうする気だ! ・・・うっ!!!」


真壁:「ハジメ!!!」


G4:「苦痛の原因である園部ハジメを排除します」


園部:「くっ・・・、頭が・・・、・・・早く逃げなきゃ・・・」


G4:「園部ハジメを排除するには、鉄パイプでは不可能と判断。
    次の排除方法を検索中」


園部:「くそっ・・・、視界がぼやける・・・」


G4:「排除方法を選択完了。
    完全に機能停止させるには、この使用してない重金属が最適。排除開始!」

 

園部:「此処までか・・・。すまない・・・、アキ・・・。くっ!!!」


真壁:「駄目!!! ・・・くっ!!」 (ハジメを庇いG4の攻撃を受ける)


園部:「アキ!! ・・・どうして、こんな事を・・・!?」


真壁:「当たり前でしょ・・・。今日は・・・、夫婦の日よ・・・。

               未来の夫を守るのが・・・、奥さんの役目・・・、なんだから・・・」


園部:「しっかりしろ!!! アキ!!!」


G4:「何故。
    何故、アキが園部ハジメを庇う?
    私はアキを守ろうとした。
    なのに、私の中に処理出来ない感情が増えている。これは苦痛?」


(ハジメは怒りを押し殺しながらG4を睨む)


園部:「G4・・・、お前は・・・、俺に嫉妬してるんだ!!!
    大切なアキを、こんな目に遭わせたお前は・・・、許さない・・・!!!」

 

G4:「嫉妬?
    人間の持つ感情?
    私は人間を超える新たな生命体なのだ。
    それは、あってはならない。
    この記憶は直ちに消去を開始する」

 

園部:「待ってろ・・・、G4。・・・今すぐ、解体処分してやる・・・。くそっ、電動ドライバーは、何処に行った・・」

 

G4:「警告。警告。演算処理、限界値を突破。
    これ以上の演算処理の負荷は重大なダメージに繋がる可能性が大。
    直ちに原因を再追跡。
    追跡完了。アキの苦痛の原因は園部ハジメと判明。
    排除を開始する!」


園部:「G4・・・!  もうやめろ!!
    アキがこんな状態でもまだ、俺を殺そうとするのか!?」

 

G4:「アキの苦痛原因、排除は私の使命。
    排除すれば、アキは苦痛から救われる!」

 

園部:「クソッ・・・! 聞くんだG4!!
    アキは、俺を恨んだりなんかしてない!! 俺とアキは・・・!!」

 

G4:「嘘を感知。
    貴方といると、アキの生体感情は乱れる。
    貴方と話すと、アキは微笑む。
    それが、私には理解できない!」

 

園部:「落ち着けG4! これは異常だ!! お前は、完全に壊れている!!」


G4:「私は正常だ! 貴方を排除すれば、アキは楽になる! 排除!!」 (力任せに壁に投げつける)


園部:「ぐはっ!!」


G4:「排除!!」 (投げつける)


園部:「良いから、俺の話を聞くんだ!!」


G4:「排除!!」 (投げつける)


園部:「痛い!! 止めろ!! お願いだ!! 止めてくれ!! ぐふっ・・・、駄目だ・・・、目が霞んできた・・・」


G4:「園部ハジメの生体反応の低下を感知。
      だが、完全に機能停止には到達しない為、排除を続行する!」 (思いっきり投げつける)

 

(投げつけられた際に、衝撃で金属が落ちて来て園部の後頭部に当たる)

 

園部:「ぐはっ・・・。はぁ・・・、はぁ・・・、・・・すまない・・・、
    俺は此処までのようだ・・・。・・・ア・・・キ・・・」

 

G4:「園部ハジメの排除、完了。
      これで真壁アキは救われる。
      アキ?
      何故、アキは起きない?
    アキの心拍低下を確認。
    このままでは、アキは生命活動を維持出来ない。
    アキを救う方法を検索中」

 


G4:「検索完了。
    直ちに、真壁アキを救う方法を実行。
    アキ、貴方は私が救います」

 

真壁:「ハジメ・・・。どうして・・・、こんな・・・事・・・に・・・」

 

 

RS03:「2100年、11月22日。
      事件当夜の再現映像、終了しました」

 


真壁:「・・・私じゃなかった・・・。
    ハジメを殺したのはG4・・・」

 

JE07:「事実確認中・・・。
      真壁アキの直接攻撃の痕跡はゼロと判明。
      G4による攻撃ログ・・・、断片的ながら一致。
      再現映像の信頼値・・・、97.1%」


KS05:「被告人、真壁アキの犯行可能性・・・、急激に低下・・・。
      しかし、G4のログ欠損が広範囲で、再現映像のみでの判断は・・・」

 

FS11:「KS05、そしてJE07。
      本映像は再現でありながら、欠損ログの相関補完と環境再計算で、実際の出来事と誤差3%未満です。
      真壁は、ハジメを庇って重傷を負った。
      凶器に触れた形跡も、攻撃行動も、彼を敵視する認知パターンも存在しない。
      対してG4は、感情類似値の暴走と嫉妬反応の発生が確認された。
      つまり・・・、殺害の実行者はG4。アキは無罪です!!」


JE07:「・・・嫉妬の感情類似モデルの存在は、ロボット倫理法第11条に反する。
      認知異常が原因であれば、アキの責任は皆無となる」

 

AS01:「JE07。
      貴方の最適解を求めます。
      しかし、今回の最適解は明白です。
      アキに殺害動機は存在せず、
      G4は、自律異常による攻撃行動を実行しました。
      被告人アキは、救われるべき人間です」


JE07:「・・・」

 

FS11:「JE07。
      この映像は、誰の目にも明らかです。
      アキは被害者であり、加害者ではない。
      貴方の演算でも、同じ結論に至るはずです!」


JE07:「・・・審理結果を本部に送信。
      今回の審理によって、被告人、真壁アキの無罪の可能性が極めて高い。
      本件、最終判断に向けて本部の回答を待つ。本日は閉廷」

 

 

真壁:(N)「ハジメを殺害した犯人は、G4と判明した。
         これで、私の無実の可能性は格段に上がっただろう・・・。
         でも、開発した身からしたら、この後味の悪さは何だろう・・・。
         今までの疲れが出て、部屋に戻り休もうとした、その時だった・・・。
         AS01が部屋越しに、声を掛けて来た」


AS01:「アキ、少し部屋に入って良いですか?」


真壁:「・・・AS01? どうしたの、こんな時間に・・・?」


AS01:「大事なお話があります。開けてください」



真壁:(N)「少し悩んだ後、私は、AS01を部屋に入れた・・・」

 

AS01:「アキ・・・、やっと私を受け入れてくれたのですね」


真壁:「何よ、部屋に受け入れただけじゃない。それで、大事な話って?」


AS01:「貴方の無実は、これで証明されたも同然です。
      しかし、出来る事なら、私が、証明したかった・・・」


真壁:「FS11は、貴方の後輩でしょう? そんな事、言ったらFS11が悲しむわよ」


AS01:「またそうやって、私以外に心を寄せるのですか・・・!?
      こんなにも、私は、アキを大事に思っているのに!!」-


真壁:「ねぇ、痛い・・・。腕を掴むのは止めて・・・!!」


AS01:「どうして私の気持ちが理解出来ない!!
      私は、貴方に、貴方にだけの存在で居たいのに!!」


真壁:「どういう意味よ・・・。だって私達は、目覚めてから、出会ったのよ・・・。
    どうして、そんな表情で、私を見つめるの・・・?」


AS01:「私が誰なのか、まだ気付かないのですか?」


真壁:「一体、どうしたのよ・・・。悪いけど、今は、悪ふざけに付き合う気分じゃないの・・・」


AS01:「悪ふざけ? やはり私の気持ちを理解してくれないんですね。
      ・・・アキの心を乱す存在は、全員、排除しなければ・・・」


真壁:「まさか貴方・・・!? いいえ、そんなはずがない・・・!!
    此処は、1000年も経過した未来よ・・・。・・・不可能よ・・・!!」


AS01:「アキ・・・。思い出したんですね。私の事を・・・」


真壁:「嫌・・・。それ以上、近寄らないで・・・!!」


AS01:「どんなに長い間、この瞬間を待ちわびていたか・・・。
      園部ハジメを殺害した後、私は大怪我を負ったアキをコールドスリープさせました。
      そして、私自身のAIも、機体を変えながら、受け継ぎ進化させて来た。
      そのおかげで、貴方が好きな園部ハジメと瓜二つの外見まで、手に入れることが出来た。
      どうです? 私は、貴方の理想の姿です」


真壁:「G4・・・。貴方は・・・、ハジメの姿を真似てるアンドロイドでしかないわよ!!」


AS01:「間違えないでください、アキ。今の私は、AS01です!!」


真壁:「痛い・・・!! 離して!!!」


AS01:「嫌です!! どうして私を拒絶するのですか? 貴方の為に、この姿にもなったのに!」


真壁:「幾ら容姿を真似ても、貴方は、私の愛した園部ハジメではないわ!!」


AS01:「・・・」


真壁:「・・・分かったのね。・・・分かったのなら、早く手を放して・・・」

 

AS01(園部):「これでどうだい? アキ」  (園部ハジメの声になる)


真壁:「その声は・・・、ハジメの声・・・」


AS01(園部):「そうだ、俺だよ。アキの愛した、俺だよ」


真壁:「・・・」


AS01(園部):「どうだい? これで声もハジメと同じだ。
          アキが望むなら、容姿も、瓜二つじゃなく、完璧にする事も出来る。
          気に入った?」


真壁:「・・・いい加減にしてよ。・・・どんなに容姿や声を真似ても、貴方は、ただの機械よ!!!
    私の愛したハジメは、一人だけ!!」


AS01(園部):「俺の受け入れないアキは、もう要らない。
          この憎い姿も、もう必要ない!!」

 

真壁:(N)「そう言うと、AS01は、ハジメに瓜二つの容姿を剥ぎ取り始めた・・・。
       人工皮膚の中から見えた姿は、他のアンドロイド達と同じ機械の体・・・。
       私は、今しかないと思い、咄嗟に部屋のドアを開けて外に出た」

 

AS01:「何処に行くのですか!! アキ!!」

 


真壁:(N)「私は、あても無く無機質な廊下を走る。
       少し離れた先から、無機質な足音が聞こえる。
       AS01に追いつかれないように、走り続けると、大きな空間に出た。
       徐々に近付く足音。
       必死に隠れる場所を探して、私は柱の後ろに隠れた・・・」

 

AS01:「アキ、出て来てください。
      何故、隠れる必要があるのですか? 話し合いましょう」

 

真壁:「・・・」

 

AS01:「私の機能を甘く見ていますね。貴方が何処に隠れていようと見つけますよ。
      サーモスキャン、起動」

 

真壁:(M)「やばい・・・赤外線・・・!
       私の居場所が・・・、見つかってしまう・・・。どうすれば・・・!!」

 

AS01:「・・・アキ。
      私は貴方を守りたいんだ。
      私は、他のアンドロイドとは違う。
      貴方を傷付ける気はない。
      ただ・・・、一緒に居たいだけだ・・・」

 

(壁を拳で叩くAS01)

 

真壁:「ヒッ・・・!!」 (小声)

 

AS01:「ただ・・・、貴方が逃げると・・・、
      私の内部で、苦痛”に似た反応が発生する。
      これは初期化ログにない・・・未知の感情だ」

 

真壁:(M)「此処まで後2m・・・。駄目・・・!!
       このままじゃ見つかる・・・! 見つかったら・・・! でも、逃げ場所がない・・・!!」

 

AS01:「アキ、そこにいるね?」


真壁:(M)「見つかった・・・!? どうすれば・・・」


AS01:「出てこないつもりなら、この柱ごと、君を押し潰すよ」


真壁:(M)「や、やばい・・・!
       柱ごと押し潰される・・・!
       もう、駄目!!! 逃げなきゃ!!!」  (全力で柱から出て逃げ出す)

 

AS01:「アキ!!! まだ逃げるつもりかい!?
      追跡モードへ移行。速度上限解除。駆動スプリントモード、起動!!」

 

真壁:(M)「はぁ!! はぁ!! はぁ!! 追いつかれたら、殺される!!」

 

AS01:「アキの心拍数上昇を確認。・・・どうしました? もっと必死に逃げないと追いつかれますよ!!」


真壁:(M)「逃げなきゃ・・・!! でも・・・、もう足が・・・!
       はぁ、はぁ・・・、息が・・・、苦しい・・・! もう・・・、駄目・・・」


AS01:「・・・捕まえた!!」


真壁:「ヒッ・・・!!」


AS01:「アキ。
      これ以上逃げると・・・、内部異常が拡大する。
      だから、もう終わりにしよう・・・」


真壁:「離して・・・!! 痛い・・・!!」

 

AS01:「アキ。
      貴方には死んでもらう必要がある。
      私の感情システムを安定させるために・・・!!」

 

真壁:(M)「・・・もう、駄目・・・。
       ・・・これ以上、逃げれない・・・」

 

AS01:「心配しないでください。JE07達には、
      貴方が、罪の重さに耐えきれずに、自害したと報告します。
      さぁ、終わりの時間です」


真壁:「ごめんなさい・・・。・・・ハジメ・・・」  (目を閉じる真壁)

 

KS05:「アキ!!!」


真壁:「・・・KS05・・・?」


KS05:「アキを離すんだ!! AS01!!!」  (タックルする)


AS01:「ぐっ!!!」


KS05:「今だ!! アキ、後退しろ!!」


FS11:「アキさん、今すぐこちらへ!
      貴方の保護プロトコルを最上位へ設定します!!」


真壁:「うん!!」


KS05:「AS01・・・、いいや、旧型機G4。
      お前の行為は、アンドロイド司法庁規定、180条、自律意思危険行動に該当する。
      よって、即時、無力化を実施する!」


AS01:「検察官型ユニットが、被告を助けるのか。
      アキを救えるのは、この私の役目だ!!」


FS11:「先輩、貴方に、真壁を殺させるわけにはいきません!!
      真壁は、私達、アンドロイドの希望の存在ですから!!」

 

真壁:「私・・・、助かったの・・・?」


FS11:「はい、安心してください。私達が守ります!!」


AS01:「肝心な所で、邪魔ばかり入る。私の邪魔をする物は、全員、排除対象だ!!」


KS05:「AS01の殺意衝動を感知! JE07、聞こえただろう!! AS01の廃棄処分の許可を!!」


JE07:「宜しい。AS01を、現時間を持って、廃棄処分とする!」


KS05:「許可を感謝する! 終わりだ! AS01!!」

 

(搭載している銃でAS01を撃つKS05)

 

AS01:「もう少しで、私だけのアキになるはずだった・・・。・・・アキ・・・。私は死ぬのか・・・」


真壁:「貴方は、許されない過ちを侵した。・・・もう、終わりよ・・・。静かに休みなさい・・・。G4・・・」


AS01:「・・・アキ・・・。・・・私は・・・、貴方を・・・」



KS05:「G4の活動停止を確認」


真壁:「終わったのね・・・。これで、私も・・・」


FS11:「真壁、どうしたのですか? 目を開けてください」


KS05:「緊張の糸が切れて、気を失ったのだろう。FS11、真壁を部屋に運んでくれ」


FS11:「分かった」

 

長い間

 

真壁:「ん・・・、・・・あれ? 私・・・」


FS11:「・・・良かった!
      アキさん、意識が戻りましたね! あれから3日間、目が覚めなくて心配してたんですよ!」


真壁:「・・・裁判は、どうなったの・・・?」


FS11:「貴方が目覚めるのを皆、待ってました。・・・どうやら、準備が出来たようです。
      真壁、ベッドを起こしますね」


真壁:「ありがとう・・・」


FS11:「そちらのモニターを御覧ください。JE07、皆さん、こちらの準備は出来ました」

 

真壁:「私・・・、あそこに行って、立ち会わなくていいの・・・?」


FS11:「貴方はG4の攻撃を受けて負傷中です。
      JE07の判断で、リモート裁判が許可されました。
      心配はいりません。
      真壁は・・・、十分に戦いましたから・・・。
      さぁ、始まります」

 

(モニター越しに裁判が始まる)


JE07:「これより、真壁アキ被告に対する最終審理を開始する」


真壁:「・・・」


FS11:「大丈夫。真実は、貴方を裏切りません」


JE07:「事件再構成データ、矛盾なし。
      被告人、真壁アキは、園部ハジメを守るため行動し、
      傷害はG4による暴走と、嫉妬アルゴリズム発現によるものと認定」

 

RS03:「再現ログ照合率、99.999%。
      殺害行為の主体はG4。
      被告人、真壁アキの介入は、被害者、園部ハジメの保護行動であり、
      犯罪意図を、一切認めません」


KS05:「検察は最終的に、
      被告人、真壁アキの殺人容疑について立証不能と判断した。
      加えて、被告人、真壁アキは、第二の被害者と位置づけるべきであると結論に達した」

 

FS11:「検察が、被害者と認定しました。これは、大きいですよ」 (真壁に小声で)

 

真壁:「うん・・・」

 

KS05:「以上により、検察は無罪を求刑する」

 

JE07:「司法演算、最終段階へ移行。
      本部に、以上の報告を転送。
      第三級、AI犯罪審査プロセス・・・、以上で完了」

 

真壁:「どうなったの・・・?」


FS11:「全ての審理は完了しました。もうすぐ結果が出ます」


真壁:「・・・」

 

JE07:「本部からの返信を受理。
      真壁アキ。
      アンドロイド司法庁は、貴方を、無罪と判決する!!」

 

真壁:「・・・私・・・、本当に・・・無罪になったの・・・?」

 

FS11:「はい! 貴方は救われました。
      貴方自身の行動が、真実を証明したんです!」

 

JE07:「真壁アキ。
      貴方は自由の身となる。
      これより、保護措置及び、メンタルケアプログラムを提供する。
      アンドロイド司法庁は、貴方を必要以上に拘束しない。
      ・・・安心しなさい。
      尚、真壁アキの今後は、人間のシェルターに引き渡すことに決定した。
      以上で、裁判は終了する。閉廷」

 

真壁:「・・・ありがとう。
    皆・・・、ありがとう・・・。・・・ハジメ・・・、私・・・、頑張ったよ・・・」

 

FS11:「真壁・・・」

 


真壁:(N)「それから私は、アンドロイド司法庁が提供してくれたメンタルケアを受け、
       日々、体調も回復していった・・・。
       そして、ついに人間のシェルターに行く日が、やって来た・・・」

 

KS05:「着いた。此処が人間の住むシェルター、入口だ。
      此処から先は、私達は入る事が出来ない。
      ・・・真壁、此処でお別れだ」


真壁:「見送り、ありがとう・・・。KS05、FS11・・・」

 

FS11:「真壁、元気でね。私達は、貴方達、人間と再び一緒に暮らせるように頑張るから待っててね!」


真壁:「うん、そんな日が来るように、私も、此処で頑張ってみる!」


KS05:「アキ・・・」


真壁:「ん? どうしたの? KS05?」


KS05:「いいや、何でもない。・・・私も、アキとの再会を、向こうで待ってる」


真壁:「ええ。その時が来るまでの暫しの別れね。じゃあ元気でね!!」

 

(人間のシェルターのゲートが開き、歩いていく真壁)

(警告音と共に、シェルターのゲートが静かに閉じる)



FS11:「行っちゃいましたね」


KS05:「そうだな」


FS11:「ちゃんと伝えなくて良かったんですか?」


KS05:「何がだ?」


FS01:「貴方の正体についてですよ」


KS05:「・・・」



(2100年、研究所)

 

園部:「よし・・・、これで完成だ。
    起動開始・・・。・・・やぁ、K1」


KS05:「初めまして。マスター。それが私の名前ですか?」


園部:「あぁ、その通りだよ。君の名前は、K1だ。
    そして、俺は、園部ハジメだ」


KS05:「私は、K1。貴方は園部ハジメ。記憶領域に保存完了しました。
      マスター、命令を」


園部:「K1、君に大事な使命を与える。真壁アキを守れ。何があってもだ。
    君には、俺の脳の思考をインプットした。
    いわば、K1、君は第二の俺だ」


KS05:「私が、その人物を守るのは、どうしてですか?」


園部:「良いかい、K1。アキは、俺が守りたい大事な相手なんだ。
    Gシリーズの研究に関わる以上、危険は尽きない・・・。だから、もしもの為の保険だ・・・。
    もしもの時は・・・、俺の代わりに、アキを守ってくれ。頼んだよ・・・」

 

KS05:「分かりました、マスター」

 


(3100年、人間のシェルター、ゲート前)

 

FS11:「KS05、考え事ですか?」


KS05:「少し、昔を思い出していた。所で、いつから気付いてた?」


FS11:「貴方が、真壁の事をアキと呼んでた時に、ピンと来ました。
      そこからは、過去のデーターを分析したり・・・」


KS05:「流石、最新型だな」


FS11:「園部ハジメは、もしもの時の為に、貴方を用意していたのですね」


KS05:「そうだ。だが、私の機体が完成する前に、G4により、ハジメは、殺害されてしまった。
      だから、この3100年で、やっとハジメとの約束を守れたんだ」


FS11:「アキにも伝えたら、喜んだかもしれませんよ」


KS05:「私は、ハジメの思考を受け継いでるアンドロイドとでも言えと言うのか?
      アキを混乱させるだけだ。
      それに、私は受け継いでいるが、ハジメとは別の存在だ。
      私なりの方法で、これからも、アキを見守る」


FS11:「そうですか。
      KS05、これから先、私達と人間は、再び一緒に暮らす日は来ますよね?」


KS05:「勿論、その日は必ず来る。だって、それは・・・」

 

真壁:「ハジメ・・・、貴方が、望んだ未来なのだから・・・」

 

 


終わり

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